補助金や助成金を活用して勤怠管理システムを導入したい人事担当者へ。導入の後押しとなる補助金や助成金にはどんなものがあり、どうすると使えるようになるのか、支給条件や支給額、活用の注意点などを詳しく紹介します。
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出退勤や残業時間など、従業員の勤怠状況を効率的に管理できる勤怠管理システム。中小企業・小規模事業者が勤怠管理システムを導入する際には、以下2種類の補助金や助成金が利用できます。
両者は管轄が「経済産業省」「厚生労働省」に分かれていることからわかる通り、そもそもの目的が異なります。
「IT導入補助金」はDX化による業務効率化を目的として、ITツールの導入にかかる費用の一部を補助する制度。2025年12月現在では正式な公募要領やスケジュールは発表されていないものの、今後「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変わることで、AIやクラウドツールの活用がより強く求められると予想されます。
もう一方の「働き方改革推進支援助成金」は近年の働き方改革促進を目的として、その環境整備のための費用を一部助成する制度です。
上記2種の補助金・助成金はいずれも勤怠管理システムの導入費用に充てることができるものの、細かな支給金額や要件が異なります。「いくらぐらいもらえるのか」「いつもらえるのか」について、概要をまとめました。
| 受給金額 | 受取時期 | |
|---|---|---|
| IT導入補助金 | 勤怠管理システムの導入・運用にかかる費用のうち5万円〜450万円(最大1/2を上限とする) | ITツールを導入し、事業実績報告を行った後 |
| 働き方改革推進支援助成金 | 成果目標の達成度に応じて異なる (例:月80時間以上だった時間外労働を60時間以下に減らしたら200万円、など) |
成果を達成したと認められた後 |
なお、両者を併用して、同一の勤怠管理システムを導入することはできません。そのため、取り組みやすい、もしくはメリットが大きい仕組みを利用するのがおすすめです。
本記事では、「IT導入補助金」「働き方改革推進支援助成金」2つの制度の詳細な内容、支給金額の目安、利用条件、注意点をわかりやすく解説します。具体的な勤怠管理システムの選定に移りたい方は「勤怠管理システム比較16選」をご参照ください。
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まずは、経済産業省管轄の「IT導入補助金」の具体的な内容について解説します。
対象となるのは、「IT導入補助金で規定されたITツール」の導入にかかる費用です。具体的は、業務効率化に向けて新たに導入するソフトウェア製品やクラウドサービス、およびサポート費用や設定費用などの部分。勤怠管理システムは、勤怠データの入力集計作業の自動化によって業務効率化が実現できるため、補助の対象に該当します。
「インボイス枠」「セキュリティ対策推進枠」など複数ある申請枠のうち、「通常枠」を選び、A類型とB類型の2種類から選択しましょう。A類型とB類型の主な違いは「補助金申請額」「プロセス数」「賃上げ目標」です。
申請できる補助金の額を指します。A類型とB類型とで補助金額が異なります。
ソフトウェアに必要な業務プロセスのこと。「顧客対応・販売支援」「調達・供給・在庫・物流」「会計・財務・経営」など、6種の業務プロセスと1種の汎用プロセスが設定されています。A類型とB類型とで、導入予定のシステムが担うべき業務プロセス数が異なります。
賃上げ目標の策定とは、以下の2つを満たす3年の事業計画を従業員に表明することを指します。
補助金交付の採否は、加点または必須項目の要件を満たしているかで判断されます。賃上げ目標の策定はA類型では加点に必要な手続き、B類型では必須要件です。そのためB類型ではこの計画が実現できなかった場合、補助金の返還が求められます。
以上をまとめると、各類型の規定は次の通りです。
A類型よりB類型の方が担うべき業務プロセス数が多く、賃上げ目標も必須となるため、補助金が高額になっています。
補助対象経費の2分の1以内
補助対象者は、資本金・常勤の従業員が規定以下の中小企業・小規模事業者です。業種の分類ごとに定義があり、最大規模でも資本金3億円以下・従業員数300人以下。たとえば小売業の場合は、「資本金の額又は出資の総額が5,000万円以下の会社、または常勤の従業員の数が50人以下の会社および個人事業主」と定義されています。
導入を検討している勤怠管理システムの提供企業が「サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局」に登録されていることも必須条件です。登録状況は、「IT導入補助金」のサイト内資料「IT導入支援事業者一覧」から確認できます。
なお、近年、「IT導入支援事業者登録を受けていない事業者がIT導入支援事業者を装って、架空の補助金申請を斡旋する」というようなケースが報告されているため注意を。ITベンダーとの商談の際には、「IT導入補助金」のサイト内資料の確認やコールセンターへの問い合わせを通して、IT導入支援事業者登録の有無を必ず確認するようにしましょう。
まず、補助事業について理解した上で、IT導入支援事業者とITツールを選定します。次に、IT導入支援事業者と事業計画を共同作成し、「交付申請」を行います。
申請には、経済産業省が提供する、1つのIDで様々な行政サービスにログインできるサービス「gBizID」のアカウント取得が必要です。アカウントの取得まで概ね2週間となっていますが、数週間を要する場合もあるので、申請を決めたら早めに取得しましょう。
審査を経て交付の採否が確定すると、事務局から交付決定通知が届きます。通常枠の場合、通知が届く前にITツールの契約・発注をしてしまうと、補助金が交付されなくなるので注意しましょう。
最終的に補助金が交付されるのは、ツールを導入して施策を実施し、「事業実施効果報告」を提出してからです。事業実施効果報告に際しての効果報告作成支援、必要情報の収集・集計、必要書類の取りまとめなどは、IT導入支援事業者のサポートを受けられます。
正式には公表されていませんが、複数の補助金サイトでは2026年以降「デジタル・AI導入補助金」に名称が変更される可能性が示唆されています。変更に伴い、今後はAIを使用したツールの導入が重視されると予測されます。
IT補助金導入にまつわる公募要領などスケジュールは、例年新年度前(2〜4月)を目安に発表されることがほとんどです。それまでは現状の制度を参考に、早めに準備を進めていきましょう。
続いては、厚生労働省管轄の「働き方改革推進支援助成金」の具体的な内容について解説します。
「働き方改革推進支援助成金」は、取り組みの内容によって4コースに分けられます。そのうち、企業が勤怠管理システムの導入に活用できるのは以下の3つです。なお、勤怠管理システムの導入は「労務管理用ソフトウェアの導入・更新」にあたるといえます。
各コースの違いは、「助成内容」「成果目標」などです。成果目標の達成状況に応じて助成金の支給額が変わるため、成果目標を達成できるか確認してからコースを選択しましょう。
令和7年現在における、各コースの主な成果目標は次の通りです。
下記の3つの成果目標の中から1つ以上を選択して、その達成を目指して実施します。
事業主が事業実施計画において指定したすべての事業場において、休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入し、定着を図ること。
建設業、運送業、病院、宿泊業など、特定の業種向けのコースです。下記の7つの成果目標のうち、各業種に該当する成果目標を1つ以上選択して、その達成を目指して実施します。なお、1-①、2〜4は全業種が選択できます。
1.
①本成果目標を初めて選択する場合
全ての指定対象事業場において、令和7年度又は令和8年度内において有効な36協定について、時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届出を行うこと。
②本成果目標の選択が2回目の場合
全ての指定対象事業場において、令和7年度又は令和8年度内において有効な36協定について、時間外・休日更に短縮又は維持することとする。上記①のア【編集部註:条件を満たした建設業】又はイ【編集部註:条件を満たした運送業】の範囲内で延長する労働時間数の上限を短縮又は維持して設定の上、所轄労働基準監督署長に届出を行うこと。
2. 全ての指定対象事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること
3. 全ての指定対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ、「労働時間等設定改善指針(平成20年厚生労働省告示第108号)」2(2)に規定された、特に配慮を必要とする労働者について事業主が講ずべき措置として、特別休暇の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること
4. 全ての指定対象事業場において、9時間以上の勤務間インターバル制度の規定を新たに導入すること
5. 全ての対象事業場において、4週5休から4週8休以上の範囲で所定休日を増加させること(建設業が選択可能)
6.医師の働き方改革推進に関する取組として以下(1)、(2)を全て実施すること(病院等が選択可能)
(1)労務管理体制の構築等
ア.労務管理責任者を設置し、責任の所在とその役割を明確にすること
イ.医師の副業・兼業先との労働時間の通算や医師の休息時間確保、長時間労働の医師に対する面接指導の実施に係る協力体制の整備を行うこと(副業・兼業を行う医師がいる場合に限る)
ウ.管理者層に対し、人事・労務管理のマネジメント研修を実施するなど、労働時間管理について理解を深める取組を行うこと
(2)医師の労働時間の実態把握と管理
労働時間と労働時間でない時間の区別などを明確にした上で、医師の労働時間の実態把握を行うこと
7.3直3交代制等の勤務割表を整備すること(砂糖製造業が選択可能)
各コースで支給額の上限や、経費に対する補助率が異なり、成果目標の達成状況に応じて支給されます。また、全コース共通で、賃金額の引き上げを成果目標に加えた場合、賃金引上げ数の合計に応じて上限額に支給額が加算されます(引き上げ人数の上限は30人)。たとえば、賃金額を3%引き上げた人数が11~30人の場合、1人あたり2万円(上限60万円)が加算されます。
3つのコースに共通する条件は、中小企業事業主であることです。中小企業事業主の定義については、業種ごとに「資本または出資額」「常時雇用する労働者」をもとに要件が定められています。たとえば「労働時間短縮・年休促進支援コース」で定義されている業種は、「小売業(飲食店を含む)」「サービス業」「卸売業」「その他業種」の4分類です。具体的な要件は次の通りです。
資本または出資額が5,000万円以下、または常時雇用する労働者が50人以下
資本または出資額が5,000万円以下、または常時雇用する労働者が100人以下
資本または出資額が1億円以下、または常時雇用する労働者が100人以下
資本または出資額が3億円以下、または常時雇用する労働者が300人以下
全体の流れは、大きく「交付申請」「取組の実施」「支給申請」の3ステップで構成されます。
まず、都道府県労働局に「交付申請書」を提出します。交付の可否通知が届いたら、勤怠管理システムの購入や導入、研修など、計画した取り組みを実施し、「支給申請書」を都道府県労働局に提出。審査後、支給が決定したら助成金を受け取ることができます。
「IT導入補助金」と「働き方改革推進支援助成金」は、どちらも効果や成果の報告が必須です。つまり、単に勤怠管理システムを導入したからといって、補助金や助成金を支給してもらえるわけではありません。あくまでも目的は、業務効率化や働き方改革の達成です。そのため、勤怠管理システムの導入と、業務プロセスの見直しや働き方改善の計画をセットで考える必要があります。
加えて、申請から交付決定・入金までに時間がかかること、それぞれの制度は単年で設計されており、年度ごとに申請期限が決まっていることにも注意が必要です。事業スピードを優先するために、申請を見送るのも選択肢の一つといえます。
2026年度のIT導入補助金の交付申請は、例年通りであれば2026年の3〜5月頃から受付を開始する見込みです(記事更新時の2025年12月時点)。ただし、名称変更に伴うシステムやスケジュールの変更も十分に考えられますので、早めの準備や最新情報のこまめなチェックを。早期の申請を考えている場合は、「gBizID」のアカウント取得を進めておきましょう。
一方、働き方改革推進支援助成金の詳細は、新年度の予算成立後に厚生労働省のHPで発表されるのが通例です。4月以降の情報を待ちつつ、交付申請書や事業実施計画の作成に着手してみてください。
具体的にどのような勤怠管理システムを選べばいいのか、というポイントについては「勤怠管理システム比較16選」で詳しく紹介しています。
その他にも、「中小企業向け勤怠管理システム10選」「無料の勤怠管理システム14選」なども用意しています。機能の豊富さよりもコスト・料金を重視したい方はご活用ください。
申請や報告の手間はかかりますが、勤怠管理システムの導入による効果や成果をしっかり見据え、計画を立て、実行できれば補助金や助成金を受けることができます。
補助金や助成金を活用する・しないに関わらず、システム導入の効果測定は重要です。逆に言えば、取り組むべきことに取り組み、その結果、補助金や助成金を支給されるのであればお得だという考え方もできるでしょう。
手続きにあたっては、適切なサポートを受けることも大事なポイントです。「IT導入補助金」はIT導入支援事業者、「働き方改革推進支援助成金」なら事業所の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にアドバイスをもらいながら進めていくのがおすすめです。
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