最終更新日:2023-08-04
診療所・クリニックをより効率的に運営するために電子カルテを導入したいが、どのような効果を期待して、どのシステムを導入すればよいかお悩みの方へ、導入メリット、検討のポイント、おすすめサービスなどをご紹介します。
電子カルテシステムとは、紙カルテで管理していたカルテを電子データ化したもので、患者の基本情報の他、SOAPや検査結果、処方情報などをPCやタブレットで入力、閲覧することができるシステムです。レセコンと一体型あるいは連携することで、受付~診察~会計までの病院内の各種データをペーパーレスで管理することができます。
電子カルテの導入は進んでおり、診療所・クリニックでの導入率は2020年で約50%(厚生労働省調べ)となっています。その背景には、安価かつ運用面でも比較的導入しやすい診療所・クリニック向けのクラウド型電子カルテの普及が挙げられます。
診療所やクリニック向けといっても、診療科や診療方法によって電子カルテの使い方は変わってきますし、求める機能も異なってきますので、詳しく見ていきましょう。
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電子カルテの導入メリットを立場別にご紹介します。
電子カルテには入力作業を効率化する豊富な機能が搭載されています。
たとえば、よく入力する項目はチェックやクリックだけで済むようにテンプレートにできます。入力の際は診察頻度の高い体の部位のテンプレートを用意して、プルダウンメニューで〇や×のチェックをするだけ、またはクリックするだけで完了。処置や薬剤などもテンプレートに登録しておけば、入力時間をより短縮できます。更に、よく使う処置を学習して自動的に上に表示してくれるAIを搭載したものも。
また、シートを自分でカスタマイズして作成・入力することで、入力漏れも防止できます。豊富なシェーマを手軽に呼び出し、タッチペンを使って紙カルテへの書き込みと同じように操作できる機能もあります。
紙カルテをめくって過去の治療歴などを探ることと比べ、電子カルテを見ることで、情報を見やすく、探しやすくなり、把握するまでの時間が短縮されます。手書きでは読みにくかった他の医師の作成したカルテも、電子カルテならすぐに理解できます。
院内の医療機器と連携することで、検査依頼や結果をデータでやり取りできます。また、外部への検査依頼も電子カルテ上からそのまま依頼できるようになり、検査結果も自動的に電子カルテに取り込まれます。手間が減るだけでなく、情報管理が簡単になり、ミス防止にもなります。
電子カルテの文書作成機能の利用や、診断書作成システムと連携することで、簡単に診断書を作成できるようになります。
入力された処方内容について、相互作用、配合変化、年齢、体重別の用量、禁忌の有無、過去の処方との重複投与などの観点でリアルタイムにチェックを行い、処方の安全性を高め、人的ミスを防ぎます。
紙カルテ利用時は口頭やメモでの伝達となっていた項目でも、電子カルテを導入し、電子カルテ上に情報を集約することで、医師からの指示や、看護師間の伝達事項も正確に受け取ることができるようになり、ミス防止につながります。
紙カルテと違い、受付や看護師同士のカルテの受け渡し作業がなくなります。
レセコン一体型、あるいは医事システムと連携することで、電子カルテに記載した内容とその結果の会計の計算が自動的に表示され、会計作業が正確、かつ大幅に効率化されます。
クラウド型の電子カルテシステムを利用することで、患者のデータは安全にクラウドで保管されるため、PCの故障や万が一の災害時でも、消失の恐れがありません。災害対策としても、個人情報保護の観点からみても、紙カルテより優れているのは間違いありません。
医師や看護師、事務職たちの業務が効率化することで、残業時間の抑制が期待できます。同じ時間内により多くの患者を診ることができるようになり、経営力の強化にもつながります。
カルテには定められた保存期間があり、紙カルテだと患者が多いほど保管場所の問題が発生します。電子カルテは保管要件を満たす場合において電子媒体での保管が認められていますので、保管場所が不要になります。
紙カルテへの手書きだと不十分であったような点でも、電子カルテで入力作業を効率化し、不備や漏れがなく、均一化が図れることで、以前の診察と別の医師が診察する際でも、紙カルテの場合よりわかりやすく引き継がれます。
病院側の手間が減ることにより、待ち時間の短縮、そしてより丁寧な診察が期待できます。
電子カルテを導入する場合、どのような点に気を付けて選んだらよいのか、比較のポイントを3点ご紹介します。
自クリニックの診察スタイルがスムーズに行えるかの確認が必要です。流れが、診察後にすぐ会計なのか、あるいは診察後に検査をし、検査結果を確認してから会計なのか、によってシステムへ求める使い勝手が異なります。流れに合っているか、合わない場合は簡単に変更またはカスタマイズできるのか、といった点は確認しましょう。
また、たとえば、シェーマを多用する場合はそこに強みのあるシステムを、検査が多い場合はスムーズに依頼・データ取り込みができるシステムを、在宅診療も行うようなら対応できるシステムを、といった具合に選ぶべきです。
診察時は患者と向き合う必要があるため、入力操作が簡単でないと入力が進みません。キーボード入力だけでなく、マウス操作のクリックや、タッチペンでのタッチといった操作を使用し、なるべく少ない工数で効率よく入力できることが求められます。
ただし、たとえば、ほとんどの患者が問診後に衣類の着脱を伴うような診察スタイルで、医師がキーボード操作に不自由なく、着脱中にさっと入力を済ませられる、といったルーティーンであれば、タッチペンやマウスなどにこだわる必要はありません。画面の見やすさ、入力のしやすさ、そして登録・閲覧時のレスポンスの速さなどを総合的に見て、自クリニックにとって「使いやすさ」を見つければOKです。多くのサービスで無料トライアルなどを行っているため試してみるのがよいでしょう。
レセコン一体型を選ぶか、あるいは医事システムがあるならそれと連携させるかを検討し、連携させる場合は簡単に連携できるかどうかの確認が必要です。サービスによっては連携できるシステムが限定されていることもあるため、確認が必要です。
ここまでお伝えしたポイントを踏まえ、おすすめのクリニック向け電子カルテをレセコン一体型からご紹介します。
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(出所:エムスリーデジカル公式Webサイト)
導入実績4,500施設以上を誇るクラウド型電子カルテ。医療従事者専門サイト「m3.com」を運営するエムスリーグループが開発・提供。約17,000人のカルテデータを分析して開発されたAI自動学習機能を搭載しており、医師がよく使う処置行為やオーダーを自動で学習。使えば使うほどカルテ作成・オーダー入力を簡略化できる。
iPadアプリで書いた内容・撮影した写真は瞬時に電子カルテに反映。ペンタブレットの筆圧や濃淡は自由自在。書きやすさは紙と鉛筆以上。シェーマもハンコ感覚で利用可能。新規開業ならレセコン一体型、既存医院ならORCA連動型というように、選択できるのも嬉しい。
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(出所:Medicom-HRf Hybrid Cloud公式Webサイト)
50年以上の実績と高いシェアを誇る診療所向けの医事一体型電子カルテシステム。オンプレだがクラウド環境で利用することもできる。カルテとレセプトの一元管理が可能。直感的な操作性とユーザーアシスト機能でカルテ入力やレセプト作業を効率化。モダリティ・PACSや問診システム、予約・再来受付システムなど、約170社の様々な機器との連携によって、院内業務をよりスムーズに行うことができる。
全国約120拠点の網羅性の高いサポート体制に加え、遠隔サポートも可能。万一のトラブルにも迅速に対応してくれる。個人情報の漏えい防止や不正アクセスの防止機能などを備えており、セキュリティ面でも安心。
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(出所:CLINICSカルテ公式Webサイト)
オンライン診療システムで豊富な実績を持つ同社が提供するクラウド型電子カルテシステム。レセプトソフト「ORCA」を内包しているため、レセプトの別途操作が不要で、予約〜受付〜診察〜会計業務まで医療機関と患者がスムーズにつながる仕組みを実現。独自のレセコン移行プログラムを構築しており、他社のレセコン情報のデータ移行もスムーズに対応できる点も嬉しい。
臨床医とデザイナーの目線で徹底的にこだわった使いやすいUIも強み。外部の検査会社からの検査データ取り込みにも対応している。オンライン診療システム「CLINICSオンライン診療」をオプション追加することで、電子カルテ上から患者のアプリと連携して利用できる。
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(出所:きりんカルテ公式Webサイト)
レセコンを利用しない場合は無料で使えるクラウド型電子カルテ。日医標準ORCAのクラウドサービスである「日レセクラウド」とワンパッケージでの提供のため、「レセコンと電子カルテを合わせて検討したい」という方には最適。
電子カルテとしての基本機能はもちろん、それ以外にも、診療予約(自動受付)、画像撮影・取込み、在宅医療に対応した機能、自由診療カルテの作成など便利な機能を標準搭載。その他、外注検査結果データの取込み、PACS・検査ビューアなどの機器とも連携可能。
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(出所:MAPs for CLINIC公式Webサイト)
予約、受付から会計までクリニック業務全般を効率化するクラウド電子カルテ。内科では薬剤変更や換算マスタへの変換に簡単に対応、小児科では入力時に小児用量画面を自動表示、整形外科では撮影オーダーのマスタを「撮影種別+部位+加算」などで合成化するなど、各診療科に特化した機能を搭載。専用アプリを使うことで操作性を高めており、ファンクションキーへの操作割当で子画面やタブなどを表示することで、情報に素早くアクセス可能。起動や操作時のレスポンスも早く、ストレスなく入力操作できる。
レセコン、レセプトチェックソフトは標準装備しているため、別途用意する必要はなし。外部機器・外注検査の双方向連動、他社製アプリのカルテ端末との同居運用にも対応するなど、拡張性も強みだ。
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(出所:Hi-SEED W3 EX公式Webサイト)
受付から会計までの情報をネットワークで繋ぐことにより、患者・医者・スタッフそれぞれの動線を大幅に効率化できるオンプレ型の電子カルテシステム。
登録した診療行為と処方内容に基づき、レセプト上必要になる病名の候補リストを表示、学習機能にも対応し、頻度の高い病名は常にリスト上位へ表示されるほか、忘れがちな併記病名も自動でお知らせ。内視鏡機器や心電図データなど各種医療機器との連携もスムーズ。ペンタブレットで所見の手書きでの記入や、ノート型の端末を使ってさまざまな場所での入力・閲覧できる機能なども人気。
(出所:TOSMEC Aventy3.0公式Webサイト)
医事会計一体型の電子カルテ(オンプレタイプ)。電子カルテから各種診断装置に患者属性情報を送信することで、スムーズに検査が行え、撮影された画像は電子カルテ情報とともにサーバーに一元管理される。
撮影画像以外に患者が持参した紹介状などの各種書類も、リストで一括管理でき、ステータス管理も行える。ペンを使って紙カルテと同じ感覚で入力できるため、キーボード操作が苦手な人でも安心。往診先でもタブレット端末で院内と同じようにカルテ入力、閲覧、検索が行える。
(出所:SUPER CLINIC公式Webサイト)
オンプレ型のクリニック向け電子カルテ。カルテ2号用紙のレイアウトを踏襲し、左側に過去カルテ、右側に当日のカルテを表示し、マウスではスクロールやクリック、タッチペンではタッチ&スライドなど、基本的な操作だけで入力可能。
次回の予約や紹介状の作成など院内で生じる多様な業務も、全ての診療情報が一元化された電子カルテからアクセスでき、業務の改善と効率化を推進。カルテ情報は独自の「トランスレート機能」により請求データに自動変換。簡単に紹介状や診断書が作成できる文書管理機能もあり。
レセコンも搭載されており、診察料などの自動算定やレセプト確認機能などを備える。
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(出所:CLIUS公式Webサイト)
法人向け業務効率化サービス「ジョブカン」などを運営する同社がクラウド型電子カルテ。目線の動きまで考えた使いやすい画面設計が人気。左側が過去の情報で右側が現在の情報ということさえ把握していれば、使い方を教わらなくても直感で入力が可能。異なる医療法人のクリニック間でも同一患者の診療録や検査結果を共有・閲覧できる機能も。
自動学習機能により医師の使い勝手がいいように改善されていく操作性にも定評あり。iPhoneで撮影した画像のカルテへの取り込みも簡単。オプションで診療WEB予約など、患者にとって利便性の高い機能もあり。
レセコンはORCAのクラウド版を利用する。
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(出所:blanc公式Webサイト)
全国200施設以上で利用されている電子カルテシステムをベースに、よりシンプルなレイアウトや操作性を追求したクラウド電子カルテシステム。カルテ内の各種情報から紹介状や診断書などの文書を自動作成でき、オーダーもワンクリックで可能。作成・登録状況も一覧で可視化できるため、作成漏れ・オーダー漏れを防げる。
その他、オーダーの期間重複チェックや薬剤投与時の禁忌チェックなどのチェック機能や、患者様の予約状況がひと目でわかる予約簿機能なども充実。わかりやすいUIのため誰でもすぐに使いこなすことができ、遠隔診療や訪問医療・看護・介護など様々なシチュエーションで利用可能。
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(出所:MALL公式Webサイト)
診療所から200床未満の病院向けにつくられた電子カルテ。運用歴約20年、導入医療施設は150以上を数え、99%と高い継続率を誇る。
医師・看護師など、利用者ごとの好みに応じてカルテ画面のレイアウトを簡単に変更可能。医療機関の意見をもとにして年2回のバージョンアップを続けており、利用する病院はその中から必要な機能を自由に取捨選択し、自院に最適な仕様を導入することができる。透析、薬剤、検査、リハビリ、手術、内視鏡などの部門システムが電子カルテと一体となっているため、スムーズなデータ連携や相互参照による業務効率化が可能。また、約150社の他社システムとの連携が可能で、既存のオペレーションに適応させることができる。
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診療所・クリニック向け電子カルテの導入メリット、検討のポイント、おすすめサービスなどをご紹介しました。紙管理からデジタル管理になることで、入力のしやすさ、管理のしやすさばかりについ目が行きがちですが、電子カルテを導入することで今まで負担となっていた作業が少しずつ軽減され、余裕ができることで患者に向き合う時間が増え、医療の質があがることが何よりものメリットと言えます。
通常の診療をしながらの紙カルテからの切り替えは腰が重いかもしれませんが、導入サポートが充実しているサービスを選ぶことで安心して進めることができるため、まず適したサービス探しから始めてみることが業務改善への近道です。
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