最終更新日:2023-06-20
負担の大きい紙ベースでの年末調整を電子化することをお考えの方へ。年末調整の電子化に関する基礎知識や導入メリット、さらに国税庁の年末調整ソフトと一般の年末調整ソフトの違いや、それぞれの特徴について解説します。
年末調整の電子化は、慣れると誰にとってもメリットが大きいと言われています。従業員にとってのメリットと人事担当者にとってのメリットと、2つの観点から解説します。
電子化すると紙の書類の受け取りや提出の必要がなくなるので、年末調整のために出社したり、郵送したりしなくてよくなります。企業側にとっても、テレワーク中心の従業員や全国の支社とのやり取りが大変な場面において効果的です。
見た目が複雑で用語もわかりづらく記入しにくい紙の申告書に比べて、年末調整ソフトからの入力はシンプルで簡単。「配偶者はいますか?」といった質問に対して「はい/いいえ」で回答するなど、アンケート形式で記入が進んでいく年末調整ソフトもあり、迷わずスムーズに申告が進められます。
提出済みか未提出か、また、どこまで記入しているかといった、従業員ごとの進捗状況を一覧で把握することができます。未提出の人にリマインドメールを送ったり、誤記入や確認事項がある人にはコメントを付けて修正依頼をしたりすることも容易です。回収にかかる手間や時間が大幅に削減できるでしょう。
控除額を自動で計算して、その結果を給与計算ソフトに入力すれば、給与支給額に反映できる年末調整システムも。年末調整だけでなく、給与計算も自動化できるのが便利です。また、手作業によるデータの入力ミス防止にも役立ちます。
2021年1月1日以降、当該法定調書の提出枚数が100枚以上になる場合において、「e-Tax等による提出義務化」が施行され、データでの提出が必須になりました。 年末調整ソフトを使えば、配布から、回収、電子申告まで対応可能なので、変換作業が不要です。
次のような流れで進めるとよいでしょう。
給与計算と連携していないと、データの出力・変換といった手間がかかってしまいます。導入する際には注意しましょう。
年末調整が必要な従業員は、電子化に伴って手続きの変更が発生しますので、事前に告知する必要があります。代表的なものが、保険会社や銀行などからの控除証明書を電子データで取得すること。通常はハガキや封書で送られてきたものを提出することになっているので、従業員側の準備や手続きが必須です。
①、②の下準備が完了したら、年末調整ソフトを通して従業員に申告を進めてもらいます。入力が完了したら、人事担当者が入力内容を確認して計算結果と還付金額を反映。必要書類を関係各所に提出して、年末調整が完了します。
年末調整手続きの電子化に伴い、国税庁から「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」(以下、「国税庁の年末調整ソフト」)が無償提供されるようになりました。国税庁の年末調整ソフトの利用メリットや使い方、利用する場合のおおまかなフローについて解説します。
従業員が国税庁の年末調整ソフトをPCにダウンロードすることで、紙ベースよりも簡便に年末調整の手続きができるようになるというメリットがあります。従業員がマイナンバーカードを持っていれば、マイナポータルとの連携により、1回目以降の保険料控除データの入力を省略することも可能です。また、年末調整の電子化にコストをかけたくない企業にとっては、無料で利用できるのもうれしいポイントであるといえるでしょう。
まずは国税庁のHPから各人のPCに年末調整ソフトをダウンロードします。そして、ソフトのガイダンスに従って、氏名や生年月日、世帯主の氏名、管轄の税務署といった基本情報や、控除の対象となる証明書の電子データを入力していきます。「マイナポータルAP」をインストールしておけば、そこから証明書の電子データをインポートすることも可能です。
次に所得金額調整控除や配偶者控除など各種控除を入力し、内容に誤りがないか確認した後に、申告書を保存・出力して、会社に提出します。
詳細は国税庁の操作説明マニュアルをご確認ください。
各従業員が入力した申告書と証明書のデータファイルを受け取ったら、入力内容に誤りがないか確認。そして、必要に応じてデータを変換して、給与システムに反映します。
国税庁の年末調整ソフトのメリットや業務の流れを理解したところで、民間のクラウド型年末調整ソフトと比較した場合、どちらを導入すべきか具体的なケースをご紹介します。
民間の年末調整ソフトは利用料金がかかりますが、国税庁の年末調整ソフトなら無料で利用できます。他ソフトとの連携といった効率化よりも、コストダウンを重視する場合は国税庁の年末調整ソフトが適しています。
各従業員がそれぞれのPCにソフトウェアをインストールして、入力操作をしなければいけないので、従業員にある程度のITリテラシーが求められます。ソフトウェアのダウンロードやインストール、入力操作、データの書き出しなどに関する知識があれば、問題なく対応できるでしょう。
国税庁の年末調整ソフトを使用する場合、人事担当者は紙で年末調整を行うときと同じような進捗管理を行う必要があります。従業員数がそこまで多くない、提出遅れや記入ミスが少ないなど、年末調整の進行管理に大きな課題がない組織であれば、機能に不足を感じることはなさそうです。
民間の年末調整ソフトは、スマホからも情報入力ができたり、情報入力画面が分かりやすくデザインされていたりと、紙の年末調整に比べて入力の手間を大きく削減するための工夫が凝らされています。また、提出状況の進捗もシステム上で管理できるため、人事担当者の負担も軽減できます。
従業員数が多く、年末調整をはじめとした、人事労務作業の負担が毎年の課題となっている組織には、様々な機能がパッケージされたソフトを導入するのがおすすめです。入退社の手続きや給与明細の発行といった、人事労務作業一般をまとめて効率化することができます。
年末調整ソフトのうち、年末調整に特化したタイプのものをご紹介。すでに利用している人事労務ソフトがある場合、年末調整機能だけを導入することが可能となります。
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(出所:マネーフォワード クラウド年末調整公式Webサイト)
人気クラウド会計ソフト「マネーフォワード」の年末調整機能が、年末調整に特化したサービスとして独立。他社の給与計算ソフトを使っていても、年末調整機能だけを導入できる。
オンライン上で書類の配布・記入・回収ができるといった、これまでの「年末調整機能」から利便性がさらに向上。e-Taxによる電子申告機能が追加されたり、事業所・従業員ごとの確定解除ができるようになったりしたほか、帳簿機能もアップデートされた。
さらに、提出が必要な書類の添付有無をわかりやすくする、添付漏れがあると次のステップに進めないようにする、従業員側からもステータスが確認できるようにするなど、UIを大幅に改善。アンケート感覚で年末調整の申告が可能に。
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(出所:オフィスステーション 年末調整公式Webサイト)
PCはもちろんスマホからも申告書の入力ができ、最短3分で書類提出が完了する簡便さが特徴。
税制改正に伴う変更点への自動対応、既存の給与計算ソフトや勤怠システムとのAPI・CSV連携が可能など、人事担当者の負担を軽減する機能が充実している。さらに社労保険労務士有資格者や実務経験者が在籍するサポートデスクにいつでもアクセスできるなど、サポート体制も万全。
また、業務システムシリーズ「オフィスステーション」には、労務、給与明細、有給管理、マイナンバー管理といった様々な人事労務管理機能が備わっている。そのため、必要なシステムを追加して、トータルでの業務効率化を図ることも可能。
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(出所:簡単年調公式Webサイト)
煩わしい書類の記入をなくし、紙書類の回収やチェックなどの煩雑業務にかかる時間を大幅に削減する年末調整システム。従業員は、スマホで証明書類を撮影・送信・確認するだけで申告が可能。人事担当者は、従業員の申告状況をダッシュボードで確認、未申告者をリストアップして、催促のメールを一斉送信することができる。
アウトソーシングサービスの併用により、従業員から送信された申告内容の確認や従業員への訂正依頼など、システム化だけでは解消できない一番手間のかかる作業を「大量処理のノウハウと正確性」をもって代行。品質を下げることなく、業務プロセスを改善することができる。
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(出所:年末調整Web申告公式Webサイト)
経営管理や会計ERP、情報セキュリティなど、様々なソリューションを提供する「さくら情報システム」の年末調整システム。
一問一答形式での申告入力のナビゲーション機能を備えているので、迷うことなく入力操作ができる。入力チェック機能も搭載されているので、入力漏れや誤記入の防止にも有効。わかりやすい画面デザインが評価され、2020年にグッドデザイン賞を受賞している。
人事担当者向けの便利機能としては、既存の給与計算ソフトとのCSV連携、申告状況のリアルタイムチェック、未申告者への一括メール送信、グループ単位での管理者権限付与など。従業員1,000名規模の企業で業務負荷を40%削減したという実績あり。
労務管理をベースに、年末調整機能も備えている年末調整ソフトを紹介します。
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(出所:SmartHR公式Webサイト)
導入実績5万社以上で、40以上の外部サービスと連携できる拡張性の高いクラウド人事労務ソフト。
従業員がSmartHRが提示する質問に従って申告内容を入力し、人事担当者が集まったデータをCSVで出力して既存の給与計算ソフトに取り込むだけで、年末調整が完了。源泉徴収書の配布もオンライン上で完結する。任意のグルーピングによる入力依頼もできるので、部署や雇用形態に応じた依頼が可能。
年末調整以外にも、従業員プロフィールといった人事情報の管理、電子申請、入社・退社の手続きといった労務管理に必要な機能がフルパッケージされている。
利用人数30名までならトライアル期間終了後も無料で利用できる「¥0プラン」も提供。
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(出所:freee人事労務公式Webサイト)
人気クラウド会計ソフト「freee」のシリーズで、中小企業向けの人事労務ソフト。労務管理や給与計算・明細作成、勤怠管理、年末調整といった人事労務に関わる機能をすべてカバーしており、従業員の情報管理が一気通貫で行える。
年末調整機能は、マイナンバーとの連携や法令改正に対応済み。完全ペーパーレスで年末調整ができる。書類の作成や申告書の配布〜回収、金額計算といった業務がすべてオンライン上で完結するので、作業時間がおよそ1/5にまで減ったという事例も。
給与計算機能も同梱されているため、給与計算や明細への反映も自動で完了。CSVデータを出力する必要がないという、多機能ソフトウェアならではの強みも。「SmartHR」とのAPI連携で従業員情報も同期可能。
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(出所:クラウドハウス労務公式Webサイト)
入退社手続きや雇用契約といった従業員情報の一元管理、WEB給与明細の発行、マイナンバー管理、年末調整など、労務関係の業務一般を効率化できるクラウドサービス。
ヒアリングをもとに業務課題を見つけ、最適な機能やプランを提案してくれるので、自社にフィットしたシステムを導入することができる。求める機能によって、システムのカスタマイズ支援を受けることも可能。サポートサイトやサポートデスクがあるほか、専任の導入支援担当をつけるオプションサービスも。
直感的な操作画面が強みで、PC・スマホどちらからでもスムーズに入力して、年末調整の申告を完了できる。
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(出所:ジンジャー人事労務公式Webサイト)
社内の労務管理から人事管理、組織編成の最適化までを一気通貫に行う人事管理システム。年末調整や入社手続きなどの労務手続きは、すべてオンライン上で完結可能。従業員が入力するだけで情報がデータベースに自動で反映。煩雑になりがちな人事データは1つの画面で集約できるので、情報管理を効率化。社内のペーパーレス化も促進する。
更に、従業員のスキルや評価を登録・分析できる機能も搭載。「ハイ」「ミドル」「ロー」といったランクで一目で確認できるほか、検索機能も備えているため、蓄積したデータをすぐに確認可能。そのまま組織編成に活用したり、研修の参加実績を記録・活用したりすることで、最適な人材育成に貢献できる。
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年の瀬の忙しい時期に実施されることから、従業員と人事担当者双方の課題となっている年末調整。毎年、年末調整の負荷が課題となっているようなら、電子化の推進が課題解決の大きな助けとなるはずです。
また、電子化やシステム導入によって効率化を図ることができる、人事労務作業は数多くあります。年末調整の見直しをきっかけに、その他の人事労務作業の効率化を検討してみではいかがでしょうか。年末調整ソフトの対応や比較ポイントを詳しく解説した記事「年末調整システムの比較15選!タイプや選び方のポイントは?」がありますので、ぜひ参考にしてみてください。
年末調整ソフトをお探しの方は、こちらから資料をダウンロードいただけます。
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