監視・ジョブの実行管理を行うツールが複数に分かれており、運用をより効率化したい情報システム部門の担当者へ。統合運用管理ツールの主な機能や選定ポイント、ジョブ管理システムや統合監視ツールとの違いとともに、おすすめのツールを紹介します。
統合運用管理ツールとは、サーバーやネットワーク、アプリケーションなどを監視し、障害発生時の対応や日々の運用作業を効率化するツールです。
具体的には、監視中に異常を検知するとアラートを通知。異常の内容に応じてシステムの再起動など、あらかじめ設定した処理を自動で行います。バックアップやデータ更新といった定期的に必要な作業の自動化にも対応し、運用担当者の負担を軽減します。
なお、オンプレミスやクラウド、両者が混在するハイブリッド環境をまとめて管理できるのも統合運用管理ツールの特徴です。
統合運用管理ツールと混同されやすいものとして、ジョブ管理システムや統合監視ツール、ITSMツールが挙げられます。この章では、それぞれの違いを整理します。
ジョブ管理システムとは、コンピューター上のジョブ(データ集計・バックアップなど)の実行を自動化・制御するためのシステムです。ジョブの実行順序やスケジュールを設定し、正常に完了したか、エラーが発生していないかといった結果を確認できます。
ジョブ管理システムについて詳しく知りたい方は、「ジョブ管理システムの比較14選。運用管理の規模やOSSを解説」もご覧ください。
統合監視ツールとは、自社で運用している複数のサーバーやネットワーク機器の稼働状況をまとめて監視するツールです。何らかの異常を検知した際は管理者へ速やかにアラートを通知し、トラブルの早期発見につなげることが目的です。
統合監視ツールに関しては、「統合監視ツールへの移行タイミングは?メリットやおすすめの12サービス」でも詳しく掲載しているのでご参照ください。
ITSMツールとは、ITサービスを安定して利用できる環境にするために、社内外の利用者からの問い合わせやシステム障害への対応を管理するツールです。ITサービス管理のベストプラクティスをまとめたフレームワーク「ITIL」に則り、担当者の割り当て、対応状況、原因分析、再発防止まで一連の流れを記録・管理できます。
ITSMツールに関しては、「ITSMツールとは?機能やメリット、タイプ別のおすすめを紹介」でも詳しく紹介しているのでご参照ください。
統合運用管理ツールは、上記3つのツール・システムに備わった機能を横断的に活用できます。サーバーやネットワークの監視、ジョブの自動実行、問い合わせや障害発生後の対応状況の管理などを一元化。複数のツールを個別に設定・操作する手間が省け、日々の運用を更に効率化できます。
なお、統合運用管理ツールは、製品によって運用を一元化する方法が異なります。主な方法は以下の通りです。
中には、これら2つの方法を組み合わせている製品もあります。
統合運用管理ツールの主な機能を、システムの状態を把握する「監視」、処理を自動で行う「実行」、障害や問い合わせへの対応を管理する「運用プロセス管理」の3つに分けて解説します。
サーバー、ネットワーク、クラウド、アプリケーションなどの稼働状況を監視し、異常や障害を検知する機能。一例として、CPU・メモリの使用状況や、Webサービスの応答有無、ログに出力されたエラーなどを確認し、サービスの停止や応答異常、設定した基準値の超過を検知します。検知した異常は、メールなどでアラートします。
中には、検知した異常の重大度を判定して、優先的に確認すべき事案を示す製品も。ひとつの障害をきっかけに複数のアラートが連鎖的に発生した場合でも、どこから対処すべきか即座に判断できます。
システムの起動・停止やデータの更新など、定期的に行うジョブを自動で実行する機能。月次・週次などのスケジュールに沿ってジョブを遂行でき、処理漏れのリスクを抑制。複数のサーバーにまたがる処理をまとめて設定・管理できる製品もあります。
また、監視機能との連携により、異常の検知をトリガーに処理を実行することも可能です。たとえば、サーバー上で稼働するサービスが停止したら再起動したり、不具合でジョブが途中で止まったら再度実行したりできます。
システム障害や問い合わせが発生した後の対応プロセスを管理する機能です。監視で検知した障害を要対応案件として登録し、担当者の対応履歴を記録。また、各案件に「未対応」「対応中」「対応済」などのステータスを付与して管理することで、未着手のものや対応が長引いているものを一目で把握できます。
更には、障害の原因調査や再発防止、システムの修正・構成変更など、その後の対応プロセスまで管理できる製品もあります。
本記事では、前章で説明した「監視」「実行」「運用プロセス管理」の対応範囲や、運用を一元化する方法の違いから、統合運用管理ツールを3つのタイプに分類しました。まずは、各タイプの対応範囲をまとめた表をご覧ください。
| タイプ | 監視 | 実行 | 運用プロセス管理 | 主なサービス |
|---|---|---|---|---|
| 統合製品群型 | ○ | ○ | ○ | JP1、WebSAM、Senju Family/mPLAT、Systemwalker |
| 監視・実行一体型 | ○ | ○ | △ | Hinemos |
| ITSM連携型 | △ | △ | ○ | ServiceNow ITOM |
続いて、それぞれのタイプの特徴について解説します。
監視、ジョブ管理、運用プロセス管理など、システムの運用に必要な機能を同一ブランドの複数製品で提供するタイプ。自社に必要な領域に応じて、導入する製品やオプションを選べます。
たとえば「JP1」シリーズの「Integrated Management 3」は、検知した異常の重大度を色分けして表示する機能を搭載。複数の異常が同時に発生した場合でも、優先対処すべき案件を見極められます。
「Senju Family」シリーズの「Senju/DC」の場合、ランブックオートメーション機能により、障害発生時の原因切り分けから一次対応まで、手順書に沿った一連の作業を自動化。障害発生時の初動を早められます。
監視、ジョブ管理、ジョブの自動化がひとつの製品で完結するタイプ。異常を早期にとらえるための機能も充実しています。
たとえば「Hinemos」には、収集した過去のデータをもとに、サーバーのリソース不足などの兆候を予測する機能が備わっており、異常につながる変化を早期に把握できます。
ITSMとの連携により、継続的な対応管理が必要なアラートをインシデントとして自動登録できるタイプ。既存の監視ツールから集めた情報を分析し、障害対応までの流れを効率化する機能も備わっています。
たとえば「ServiceNow ITOM」は、AIOps(AIや機械学習を活用して、IT運用業務を自動化・効率化する手法)により障害の原因を予測する機能を搭載。原因調査にかかる時間を短縮できます。
統合運用管理ツールを選ぶ際のポイントを解説します。
監視機能やジョブ管理機能、運用プロセス管理機能など、自社に必要な機能が標準で利用できるのか、別製品や追加オプションが必要なのかを確認しましょう。統合製品群型であれば、機能ごとに製品が分かれているため、自社で使いたい機能を柔軟に組み合わせられます。
また「Senju Family」シリーズの「Senju/EN」は、複数の監視ツールから上がるアラートを集約する「Hub」、大量のアラートをフィルタリングする「Rule」、担当者が必要な情報だけをダッシュボードに表示する「View」の3つのエンジンを個別に導入可能。既存の運用環境を活かしつつ、不足機能を補えます。
自社で利用しているクラウド環境やOSが管理対象に含まれているか確認しましょう。
たとえば「JP1/Integrated Management 3」は、AWS・Microsoft Azure・Google Cloudなどのクラウド環境や、Windows Server・LinuxなどのOSに加え、Dockerなどのコンテナ(アプリケーションの動作環境を仮想的に構築する仕組み)の監視にも対応しています。
すでに利用している監視ツールやITSMツールなどと連携できるかも見ておきましょう。
たとえば「Hinemos」は、世界的に使われているOSSタイプの監視ツール「Zabbix」との連携に対応。反対に、Hinemosで収集したデータを「ServiceNow」などのITSMツールへ自動登録することもできます。
異常を検知した後、復旧に向けた処理をどこまで自動化できるかは製品によって異なります。どの作業を自動化したいのかを整理したうえで、必要な範囲をカバーできる製品を選びましょう。
たとえば「WebSAM SystemManager G」は、監視で検知した異常の内容に応じて、あらかじめ設定したアクションを自動で実行できます。更に、検知した異常のデータを外部のWebサービスへ送って処理につなげることも可能。異常発生時の対処の幅を広げられます。
サーバーやジョブ、拠点が増えた場合に、管理範囲を柔軟に拡張できるかも重要なポイントです。
たとえば「Systemwalker Operation Manager」には、大規模システムや基幹業務向けの「Enterprise Edition」があり、大量のジョブを複数のサーバーに分散して処理できます。
「Hinemos」の場合も、オプションにより、監視やジョブ管理を担う中核機能を冗長化できます。片方に異常が発生しても、もう一方に切り替えて運用を継続できます。
統合運用管理ツールは、製品によってライセンスの課金単位や、料金に含まれるサポート内容が異なります。自社のシステム運用状況に当てはめた場合の必要なライセンス数を確認し、オプションや保守費用も含めた総額を見積もっておきましょう。
料金が公開されているツールの例として、「Hinemos」の場合は最もリーズナブルな「Essential」プランが年額100万円。ソフトウェアの利用に加え、マニュアルやFAQの閲覧、製品に関する問い合わせサポートなども提供されます。
また、「WebSAM SystemManager G」の場合、監視情報をまとめて管理する「Manager」が69万円~。各サーバーのログやCPU・メモリの使用状況などを監視する「Agent」は1ライセンスあたり69,000円〜で、監視する台数に応じてライセンスが必要です。 なお、製品購入後に問い合わせ対応などを受ける場合は、別途サポートサービスを契約する必要があります。
監視、ジョブ管理、運用プロセス管理などの運用を同一ブランドの複数製品でカバーするタイプの統合運用管理ツールを紹介します。
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(出所:JP1公式Webサイト)
オンプレミスやクラウドを含むシステム環境の監視からジョブ管理、運用プロセス管理まで支援するツール。
ITインフラ全般を監視するJP1/Integrated Management 3は、検知した異常の重大度を色分けして表示。複数の異常が同時に発生しても、優先対処すべき案件を見極めやすい。同じサーバーやログから出た通知をまとめる機能もあり、大量の通知に埋もれることなく重要な異常を把握できる。
JP1/Automatic Job Management System 3は、オンプレミスとクラウドにまたがる処理をひとつのジョブフローに統合可能。あらかじめ設定した条件をトリガーにジョブを実行することもできる。
JP1/Service Supportは、インシデントへの対応状況を一元管理。障害の詳しい原因調査やシステムの修正が必要になった場合は、案件を別のプロセスに引き継いで管理しつつ、一連の対応を追跡できる。
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(出所:WebSAM公式Webサイト)
複数の処理を組み合わせたジョブフローを設計でき、障害の検知から対処状況の管理まで完結する統合運用管理ツール。
WebSAM SystemManager G は、オンプレミス・クラウド環境を含めたシステムを監視。また、既知の障害に関しては対処法が画面上に表示されるのが特徴。手順をその場で確認でき、復旧作業に取りかかれる。
WebSAM JobCenterでは、ドラッグ&ドロップで様々なパターンのジョブフローを作成可能。フローは運用前に動作確認できるので、設定ミスのリスクを抑えられる。ジョブの実行状況は画面に表示。異常時には再実行や停止などの処理が可能で、想定より時間がかかっている処理も確認できる。
WebSAM ServiceManagerは、ITILをベースに障害情報や対処内容を記録・蓄積。サーバーやソフトウェアなどの関係性を図式化する機能もあり、障害の影響がどこまで波及するかを把握しやすい。
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(出所:Senju Family/mPLAT公式Webサイト)
監視・ジョブ管理から、複数の運用管理ツールの統合、障害発生後の対応まで包括的にカバーするツール。主に3つの製品群を展開。
Senju/DCは、サーバーやネットワーク機器をまとめて監視できるほか、ジョブのスケジュール設定や実行管理にも対応する。また、ランブックオートメーション機能により、障害発生時の原因切り分けから一次対応まで、手順書に沿った一連の作業を自動化できる。
Senju/ENでは、すでに運用中の複数のツールからあがる監視データを一カ所に集約し、大量のアラートから必要なものだけを絞り込み可能。監視担当者や管理者など、利用者ごとに必要な情報をダッシュボードに表示することもできる。
Senju/SMでは、社内外のユーザーから寄せられるシステム関連の問い合わせや、障害への対応状況を一元管理。過去の対応履歴はナレッジとして蓄積・検索でき、類似したトラブルへの対応にも活かせる。
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(出所:Systemwalker公式Webサイト)
システムの監視や定型ジョブの自動化など、ITシステム運用のライフサイクルを支援するツール。主に2つの製品で構成されており、監視を担う「Systemwalker Centric Manager」では、オンプレミスとクラウドが混在する環境をひとつの画面で監視できる。AWSやAzureを利用中、負荷に応じてサーバーが自動で増減する環境の監視にも対応。サーバーが追加・削除されたら監視も自動で開始・終了するため、台数が変わるたびに設定を変更する手間が省ける。
「Systemwalker Operation Manager」では、ジョブの実行条件を細かく設定できるのが便利。決められた日時だけでなく、ファイルの到着をきっかけに処理を開始したり、前の処理が正常に完了した場合のみ次の処理を進めたりできる。処理の進捗はガントチャートやフロー図で直感的に把握できるため、遅れや異常に気づきやすい。
監視、ジョブ管理、ジョブの自動化がひとつの製品で完結するタイプの統合運用管理ツールを紹介します。
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(出所:Hinemos公式Webサイト)
システムの監視と、バックアップやデータ更新などのジョブを自動で実行する機能をワンパッケージで備えた統合運用管理ツール。システムの監視はHinemos単体で行えるほか、既存の監視ツールから送られるデータを集約することもできる。
ジョブは、カレンダーに沿って定期的に実行するのはもちろん、監視で検知した異常をトリガーに実行することも可能。更に、所定の時刻までに開始・終了していないジョブを検知して、スキップ・停止などの対処を自動で行う機能も備わっている。複数のサーバーにまたがる処理も、実行順序やスケジュールをまとめて設定管理でき、サーバーごとに個別操作する手間が省ける。
そのほか、Hinemosで収集した過去のデータをもとに、サーバーのリソース不足などの兆候を予測する機能も搭載。異常につながる変化の早期把握に役立つ。
ITSMと連携できるタイプの統合運用管理ツールを紹介します。
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(出所:ServiceNow ITOM公式Webサイト)
既存の監視ツールと連携し、異常の集約・分析からITSM上へのインシデント登録まで一元化できる統合運用管理ツール。主要機能のひとつであるイベント管理機能では、複数の監視ツールからシステムの稼働状況や異常に関するデータを収集。それらをAIOpsを活用して分析し、関連するアラートをグループ化することで重複した通知を減らせる。更には、AIOpsによって障害の原因を予測することも可能で、原因調査にかかる時間を短縮できる。
ほかにも、サーバーやアプリケーションなどのIT資産を自動で検出し、それぞれの関係性を可視化する機能を搭載。システムの構成が一目で把握でき、障害発生時の影響範囲の特定に役立つ。
シリーズ製品の「ServiceNow ITSM」と連携できるのも特徴。イベント管理機能で生成されたアラートのうち、その後の対応が必要な案件をインシデントとして自動登録できる。
ITサービスの維持にあたっては、サーバーやネットワーク、アプリケーションなどの監視に加え、障害発生後の対応など様々な作業が発生します。これらを個別のツールで管理していると、複数の画面を行き来しながらそれぞれの設定や状況を確認する手間がかかります。
こうした運用業務をまとめて管理するのに役立つのが、統合運用管理ツールです。製品によって搭載機能は異なりますが、オンプレミスとクラウドが混在する環境を一元管理できるものや、検知した異常の重大度を判定し、優先して確認すべき事案を示すものも。日々の運用負担を軽減できます。
統合運用管理ツールは、以下3つのタイプに分けられます。
(1)統合製品群型
(2)監視・実行一体型
(3)ITSM連携型
本記事を参考に、自社のシステム環境に合ったツールを選んでみてください。
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