最終更新日:2024-02-02
製造業において、大量の見積もり依頼への対応に課題や負担を感じている方へ。図面データを活用して見積もり作業の効率化や属人化解消を実現する、製造業向け図面見積ソフトの機能やタイプを紹介します。
製造業向け図面見積ソフトとは、図面などから製造に必要な部品・材料を読み取り、見積もりを簡単に作成できるサービスのことです。
製造業の現場では、見積もりを作成するにあたって図面を利用する場合が多くあります。ただ、部品の数や材料の種類などが多岐にわたるため、見積もりの計算に時間と手間がかかってしまいがちです。また、作成者によって見積もりの金額にばらつきが出やすかったり、手入力によるミスが起きやすかったりといった点も課題として挙げられます。ほかにも、見積もり業務が特定の担当者に集中しやすくなるので、属人化してしまうデメリットも。
こうした課題の解消に役立つのが製造業向け図面見積ソフトです。図面見積ソフトは、PDF、TIFなどの図面データをアップロードするだけで、自動で加工形状や穴形状を判別できます。そして、外寸、数量、加工方法など必要な情報を入力すれば、AIが類似データを参照し、自動で見積もりを作成。更に、全体の見積もりだけでなく、加工時間や材料費の原価も算出可能です。
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製造業向け図面見積ソフトを導入すれば、部品・材料ごとに金額を調べて、合計金額を算出する手間がなくなるので、見積もり作業の効率化が図れます。ソフトによっては、あらかじめ寸法や単価を設定できたり、作業工程における工賃を登録できたりするので、より詳細な見積もりを作成可能です。
また、見積もり金額はデータベース上から算出されます。そのため、担当者によって見積もり金額にばらつきが出たり、人的ミスが起きたりするリスクも低減でき、精度の高い見積もりを提示できるようになります。経験に関係なく、新人の現場担当者や営業担当者でも簡単に見積もりが作れるようになっているので、見積もり作成における属人化の解消も期待できます。
製造業向け図面見積ソフトは、主に以下の加工形態・素材に対応しています。なお、システムによっては対応範囲が異なるため、確認が必要です。
素材 | 加工形態 |
---|---|
・鉄 ・非鉄 ・樹脂 ・セラミック ・ゴム ・銅 ・アルミ ・鋳鉄 など |
・機械加工 ・表面処理加工 ・板金加工 ・金型加工 ・研削加工 など |
これまでは、図面から得られた情報をOCRで読み取るタイプのソフトが主流でしたが、最近はAIを活用したソフトも登場しています。中には、仕入れの品番やサイズ対応の効率化、類似商品の提案、条件に合わせた仕入れ商品の検索など多彩な機能を備えているものも。
AIを活用したソフトは、継続的に利用することで図面の種類や数が蓄積し、過去の図面を短時間で参照できたり、より正確な見積もり金額の算出につなげるための学習ができたりする点が魅力です。
なお、図面検索に特化したシステムに「AI類似図面検索システム」があります。詳しく知りたい方は「AI類似図面検索システム9選。仕組みやメリットは?」をご覧ください。
製造業向け図面見積ソフトには、主に以下の4つの機能があります。
2Dまたは3Dの図面データからOCRで材質名・サイズ・数量などの情報を自動で読み取り、見積もりを作成できます。図面データはPDFなどの電子データはもちろん、紙をスキャンしてデータ化したものまで幅広く対応。見積もり作成に必要な原価計算はコストテーブルや外部データとの連携により、部品や材料の価格をその都度調べる必要もなく、精度の高い金額を短時間で算出可能です。
過去に作成した図面の検索によって、これまでの見積もり実績や、原価計算を参照できます。新たに見積もりを作成する場合も、過去の類似図面を活用することで、正確かつ統一された内容での算出が可能です。
類似図面の検索にAIや画像解析アルゴリズムを採用しているソフトの場合は、図面に記載がある部品名、材質、サプライヤーなどのテキスト情報をデータ化することで時間をかけずに欲しい図面を探し出せます。また、図面を属性で分類し、検索時に図面と紐づけることで検索精度を上げることも可能です。
材料を発注する際にかかる製造原価や、材料の加工費、工費をあらかじめ設定しておくことで、製造時にかかる費用をトータルで計算できます。見積もりの価格が適正かどうか確認するだけでなく、類似図面との費用比較などにも活用されています。
またサービスによっては、原価計算から粗利の分析、部品の入出庫・在庫管理といった他機能と連携して使えるようになっているものも。
たとえば「SellBOT」では、非鉄金属、プラスチックなど各種材料のフリーカットに対応している「白銅ネットサービス」の材料価格を表示させる機能を搭載。これにより、取り寄せ材料の見積もりも同時に算出でき、作業効率の向上が期待できます。
図面見積ソフトは、目的や機能によって3つのタイプに分類できます。
図面から自動で見積もりを作成できるタイプです。見積もり作成の効率化や属人化を図りたい場合に適しています。サービスによって利用を想定している図面のタイプが異なるので、自社で扱っている図面との親和性を確認しておくと安心です。
「SellBOT」は、2D図面からOCRで材質を自動抽出し、サイズと数量を入力するだけで、AIが自動で見積もりを作成してくれます。類似図面の参照や過去の実績価格など精度の高い見積もり作成ができるのも特徴です。また、「Orizuru 3D」は3D CADで設計した製品をAIの利用で、コストテーブルによる原価積算、類似する過去実績の参照、機械学習による価格推定を組み合わせながら見積もりを自動作成できます。
原価の積み上げ計算が効率的に行えるタイプです。作業工程や部品・作業単価を積み上げて原価計算し、見積もりを算出します。あらかじめ設定した算定ロジックや料金テーブルを使って積算する場合はこちらが最適です。
「GENKEI VAULT」は熟練技能士の経験を再現した「加工原価算出ロジック」や、仕入れ費用、外部製作の見積もり情報まで計算できます。また、「TerminalQ」は工程や時間単価を設定後、見積もり作成画面で図面を見ながら作業工程や使用機械の作業時間を入力すると、見積もりが作成できます。
図面データを読み取り、形状やテキスト情報などから見積もりの参考となる過去の類似事例を見つけられるタイプです。これまで扱った図面が多く蓄積されている、過去の事例から見積もりを出すケースが多いなど、見積もり作業の効率化と社内データの有効利用を図りたい場合に適しています。
「AI類似図面検索」はディープラーニングを用いた物体検出アルゴリズムで、2D図面データの検索が可能。「匠フォース」は独自開発の画像解析アルゴリズムによって、類似図面はもちろん、リピート案件も素早く判定できます。「CADDi Drawer」では独自の画像解析アルゴリズムによる図面の検索だけでなく、登録した図面内のテキスト情報のデータ化や、発注実績データと図面の自動紐づけ機能も備えています。
なお、過去図面の活用に強みのあるシステムについては、「AI類似図面検索システム9選。仕組みやメリットは?」で詳しく解説しています。
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(出所:SellBOT公式Webサイト)
2D図面の見積もり提出の課題をAI技術で改善し、DX化に導く業務改善プラットフォーム。サイズと数量を入力すれば最短3秒で見積もりを自動作成。継続利用により見積もり図面が蓄積すれば、AIが追加学習を行うため、高精度な見積もりが作成できるように。図面データは、PDFとTIFFに対応。
ヒートマップ機能では、図面内の部品だけをAIが自動認識するため、類似図面の検索精度が高く、過去の実績価格まで参照できるため便利だ。更に、2D図面から材質をOCRで自動抽出できたり、加工時間など複雑な原価も自動計算できたりするのも心強い。また、金属材料は白銅ネットサービスと連携できるので、自動計算もできる。対応加工は、機械、表面処理、板金、金型。素材は非鉄・鉄、樹脂・セラミック、ゴムなどに対応。
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(出所:ESTIMATE for MACHINING公式Webサイト)
2D図面もしくは3D図面から見積もりを短時間に算出できる、部品加工向けの見積もりシステム。専門的な知識や技術がなくても、素早く正確に加工見積もりを行える点が強み。3Dモデルではフィーチャー認識機能により加工部位が自動的に認識され、半自動的に見積もりを作成できる。3次元形状は各加工箇所を色分けすることで、色ごとに工程、加工精度などを設定して見積もりを自動化できる。また、紙図面しかない場合でもPDFデータ化することによって対応可能だ。
商品企画の段階で部品の加工原価を算出することで、コストが高くなる設計上の要因を除外し、原価を抑制できるメリットも。AIによる機械学習機能も搭載しており、見積もり精度の向上に役立つ。
(出所:Orizuru 3D公式Webサイト)
3Dデータを管理・表示・検索できる、AI機能で業務効率化するモジュール。「コストテーブルによる原価積算」「類似する過去実績の参照」「機械学習による価格推定」の3つのAIアプローチによって見積もりを自動化。勘と経験を頼りに行うことも多い見積もり業務の属人化改善にもつながる。
3D形状データからAIで特徴を抽出し、類似度を判定できるため、類似部品の実績を元に部品製造の見積もり・工程設計を効率化。建築設計では2D表示と断面表示の組合せを用いて図面へ流用したイメージを作成できる。すでにある社内システムへの組み込みも、建設CADのIFCフォーマットに対応したモジュール、ライブラリとして提供するためスムーズに。
(出所:GENKEI VAULT公式Webサイト)
熟練技能士の経験を再現した見積もりシステムと加工要素認識AIによるクラウド加工原価見積もりサービス。加工経験豊富な技能士が長年の経験を数値化した「加工原価算出ロジック」により、経験が浅い場合でも製造プロセスを反映した高精度な見積もりを作成できる。加工方法で登録できるのは、板金、溶接、鋳造など。対応材質はアルミ、鉄、銅など全39種類と豊富だ。
自社の加工原価見積もりに加え、外部からの仕入れとなる材料費や表面処理、その他の外部製作となる工程の見積もり情報を取り込み、調整が可能。ほかにも、利益率の設定や製造原価・売価の算出、計算結果の保管まで同ソフトで一元管理できるのも魅力だ。パラメーター調整によって、社員が同一のロジックを利用し、同水準の見積もりを作成できるメリットも。
(出所:iQシリーズ公式Webサイト)
板金・製缶加工向けの見積ソフト。クラウド版とローカル版のほかにも、テレワーク機能を搭載したバージョンを用意。図面をなぞって見積もり計算するユニークな操作性で、現場未経験者でも見積もり作業が可能だ。CAD機能、3D表示から、経験者向けの数値入力による見積もり作成にも対応している。
見積もり機能以外のオプションとして、2D図面を3D CADデータへ変換するプログラムサービス、受注分析・粗利分析用の見積もりアナライザ、部品の入出庫や在庫管理など、見積もり作成を効率的に利用する機能が充実。
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(出所:AI類似図面検索公式Webサイト)
図面ファイルをドラッグ&ドロップするだけで、AIが過去実績から類似した図面を検索して類似度順にリストアップできる、図面検索システム。図面データは利用企業のサーバーで保管し、プログラム管理はクラウド上で行う仕組みだ。
ディープラーニングを用いた物体検出アルゴリズムで2D図面データの対象となる部分を自動で囲い込み、類似した図面を検索・抽出する。同社の生産管理システム「TECHSシリーズ」と連携しており、呼び出した図面の材料費や加工費を見積もりに活用できる。対応業種は機械用部品、板金、金属加工、プラスチック加工と幅広い。
導入企業に応じてAIにチューニングを施すため、汎用AIを利用したソフトウェアよりも自社に合った精度の高い検索結果が得られるようになっている点が強み。紙の図面をスキャンしたファイルや画像ファイル、PDFなどに対応。
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(出所:匠フォース公式Webサイト)
中小部品メーカー向けに特化したAI搭載の見積もり支援システム。図面管理から値決め、見積書の作成・発行、関連情報の紐づけまでオールインワンで対応。また、原価は図面や資料を参考にしながら、各企業のルールに基づいて積算できるので、原価計算のルール標準化や赤字案件の改善、教育コストの削減にも役立つ。更に、独自開発AIによる類似図面検索機能・リピート案件判定機能によって、過去案件の参照もスムーズに行えるので、工数削減にもつながる。
機械加工、板金加工、研削加工、表面処理加工に対応し、自動車・家電・産業機械・航空・医療業界など、様々な業界で利用されている。
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(出所:CADDi Drawer公式Webサイト)
独自の画像解析アルゴリズム(特許出願済)を搭載した図面データ活用クラウド。形状が類似する図面を検索する機能により、類似図面を登録図面から検出・表示。登録した図面内のテキスト情報は部品名、材質、サプライヤー等がデータ化され、読み取ったテキスト情報はExcelとして出力できる。また、手書き文字や登録済みデータの重複回避もでき、作業効率の向上も期待できる。
発注実績データをCSV等で一括登録すると、図面の属性値をキーとして自動紐づけを行う「発注実績情報自動紐づけ」機能も搭載。過去の注記や不良実績の確認もスピーディーに行えるため、トラブル回避にも役立つ。英語にも対応。
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(出所:AI類似図面検索システム公式Webサイト)
図面、形状の中からAIが学習した特徴により類似の図面・形状を検索するシステム。キーワードによる検索ではなく、図面に含まれている形状から検索できるため、単に検索システムとして利用する以外にも、ほかのシステムとの連携や図面ファイルの自動取り込みなど、既存システムに合わせてカスタマイズが可能。
検索機能は手書きによる類似形状、形状の類似図面、単一形状の類似、属性情報と類似図面・形状の組み合わせなど、豊富な組み合わせで必要な図面や形状を検索できる点も強み。図面追加後も、継続的に検索精度を維持するため、AIは自動学習でなくモデル再調整など二次学習機能ができることも特徴だ。
図面から見積もりを作成する際は、部品や材料の原価や種類の特定に時間がかかるうえに、作成者によって見積もり金額にばらつきが出ることもあります。図面見積ソフトの導入によって見積もり作成の時間短縮、負担軽減といった効率化が図れるとともに、現場未経験の方でも使用できる手軽さから、見積もり作成業務の属人化解消にもつながります。以下、要点(よくある質問)をまとめておきましたので、参考にしてください。
見積もり書の作成に限定すれば、Excelでの自動化も可能です。しかし、Excelでの見積もり書作成は、「属人化しやすい」「管理が煩雑」といった課題があります。見積もり作業以外の関連業務も含めて、DX化を図りたい場合には、図面のデータ化、過去の部品・材料ごとの自動算出、AIを活用した類似図面の提案までカバーできる図面見積ソフトの導入を検討されることをおすすめします。図面見積ソフトは統一したロジックで見積もりができ、データの共有も簡単なのでおすすめです。
多くの自動見積ソフトでAIが活用されていますが、ソフトによって活用方法が異なります。
AIの活用方法 | 主なソフト |
---|---|
AIが図面認識から自動見積もり作成まで行うタイプ |
|
AIが過去実績を参照し、見積もりの精度を向上させるタイプ |
|
AIによる類似図面の検索に特化しているタイプ |
|
自動で図面見積もりを作成できるソフトは、以下の3つに分けられます。どのようなケースで見積もりを作成することが多いのか、自社の状況や課題解決につながるサービスを選んでみるといいでしょう。
タイプ | サービス名 |
---|---|
(1)自動で見積もりを作成できるタイプ |
|
(2)積算作業の効率化に対応するタイプ |
|
(3)過去図面の参照による見積作業効率化に対応するタイプ |
|
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