最終更新日:2023-07-18
オンライン上で最短即日で本人認証することができる、事業者の間でも注目を集めているeKYC(オンライン本人確認)。どういうやり方があるのか? どんなシーンで利用されているのか? その安全性は? 一つひとつわかりやすく紹介しています。
eKYCとは、スマホやPCを使用して、オンライン上で本人確認を完結できる仕組みのことです。読み方は「イー・ケーワイシー」と読みます。
銀行口座開設・クレジットカード発行などを行うためには「本人確認手続き」が不可欠です。従来は、店舗を訪れて行う対面手続きや非対面手続きの郵送手続きが一般的で、その場合、事業者・ユーザー双方にとって「サービスの利用開始まで時間がかかる」「本人であることの確認に手間がかかる」などの問題点が多く挙げられてきました。
しかし、eKYCならスマホで自分の顔と身分証を写真に撮って、それをアップロードするだけで本人確認可能。早ければ即日で本人確認を完了することができるなど、ユーザー・事業者にとってメリットが大きいことから導入が進んでいます。
本記事では、「このeKYCとはどういうものなの?」というところから、その仕組みや安全性、具体的な利用場面についてご紹介します。
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まずは、eKYCをご理解いただくために、その前提となる「KYC」とはそもそも何なのか?というところから見ていきましょう。
KYCとは、「Know Your Customer」の略称で、マネーロンダリングやなりすましなどの不正行為が行われるリスクの高い行為について義務付けられた本人確認手続きの総称を言います。
たとえば、銀行やクレジットカード会社などが行う、銀行口座開設やクレジットカード発行などが「リスクの高い行為」に当たります。この場合、銀行やクレジットカード会社は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、「犯収法」)に定められたやり方にのっとって、顧客の本人確認を行わなければなりません。
<本人確認が義務付けられている主な領域>
対象機関 | 根拠法 | 目的 |
---|---|---|
金融機関・証券会社等 | 犯罪収益移転防止法 | マネー・ロンダリング等の防止 |
携帯電話事業者 | 携帯電話不正利用防止法 | 携帯電話の犯罪利用の防止 |
リサイクル業者 | 古物営業法 | 盗品等の売買の未然防止 |
マッチングアプリ運営業者 | 出会い系サイト規制法 | 未成年の利用防止・児童保護 |
ほんの10年ほど前まではKYCの大半は、対面による手続きで行われていましたした。しかしその場合、顧客にとっても手間がかかりますし、銀行にとっても「必要書類を忘れた」「手続き上の不備があった」などがあると二度手間です。顧客が口座開設やクレジットカード発行を断念してしまう恐れもあります。
一部、来店せずに、郵送で書類をやりとりして本人確認を行う非対面手続きも認められていましたが、この場合、より厳格な手続きが必要になってきます。取引の安全性は担保できるものの、その一方で「工数がかかりすぎる」「負担が大きい」「途中で面倒臭くなって離脱してしまう」などの課題が挙げられていました。
そんな状況を打開するべく、2018年の「犯収法」施行規則の改正により認められたのがオンラインでの電子的な本人確認「electronic KYC(eKYC)」です。これにより銀行口座開設・クレジットカード発行も、手持ちのスマホを使って、簡単にオンラインで本人確認手続きを完了できるようになったのです。
本人確認書類を用いた本人確認の種類としては、現在、犯収法により以下の4つの方法が認められています。
ただし、その利用には偏りがあり、実際に利用されている事例の多くが「1.」「4.」の2通りに限られています。「1.」はスマホのみで本人確認が完結できるため手間がかからないためであり、「4.」は本人確認書類であるマイナンバーカードが急速に普及しているためです。
他のやり方は、なりすまし防止などセキュリティには長けているものの、ICチップの読取にICカードリーダやNFC対応スマホなど専用のデバイスを用意しなければならないなど、色々手間がかかるため、導入する企業が限られているのが現状です。
どのようにしてオンライン上で本人確認が行われているか、eKYCを使った本人確認の仕組み・安全性を、本人確認の主流である「1.」を例にしながら、詳細に説明していきます。
用意するもの
撮影方法
事業者が提供するソフトウェアを使用して撮影(スマホ内蔵のカメラアプリなどは使用不可)。本人確認書類と本人の容貌をそれぞれ別個に撮影するケースもあれば、本人が免許証など確認書類を持って一度にフレーム内に収めるケースもあります。
本人確認の強化のため、撮影中に「上を向いて、下を向いて」など指示を出して複数の角度で撮影するものや、動画やビデオ通話機能を利用するものもあります。
送付方法
事業者が提供するソフトウェアを使用して送信しなければなりません(メールなどは不可)。
判定方法
送付した身分証に記載されている本人写真と容貌写真が一致することを確認したら本人確認完了です。照合作業は、オペレーターが行う場合、AIの画像識別が行う場合、その両者を組み合わせる場合など、事業者によって異なります。自社で照合作業を行うことが難しい場合は、「TRUSTDOCK」のように本人確認の照合作業をアウトソースで請け負ってくれるサービスもあります。
認証精度
顔認証やAI技術の進歩に伴い、年々高まっています。たとえば、「Digital KYC」に搭載された顔認証AIエンジンは、米国国立標準技術研究所による性能評価で5回も第1位を獲得。誤判別率0.5%という優れた精度を持っています。また、「Polarify eKYC」で使用されているDaon社の顔認証技術は世界各国の金融機関で実績のあるものなので、十分に信頼できるものと思われます。
「氏名・住所・生年月日が記載された写真付きの本人確認書類原本」が必要です。たとえば、「運転免許証」「運転経歴証明書」「在留カード」「特別永住者証明書」「パスポート」「マイナンバーカード」「住基カード」などが当てはまります。残念ながら、写真のない健康保険証などはeKYCの本人確認に用いることはできません。
なお、政府はeKYCに限らず、本人確認書類としてマイナンバーカードの原則利用を掲げており、その一環として2023年6月には改正マイナンバー法により、健康保険証の2024年秋までの廃止を決定。その他、運転免許証、在留カードに関してもマイナンバーカードとの一本化に向けた検討を進めています。
続いては、eKYCが実際にどのような場面で利用されているのかについてです。eKYCは様々な場面で用いられていますが、「法規制に基づいて行われている場合」と「自主的に利用されている場合」に大別されます。
法律上、本人確認が義務付けられている場合です。たとえば、「犯収法」では本人確認が必要な事業者として以下の事業者を挙げています。事業者が行うすべての行為に本人確認が必要なわけではなく、その中でも、預貯金口座の開設や大口現金取引、クレジットカードの締結、その他、なりすましの疑いがある取引などハイリスク取引を行う際に、「取引時確認」と呼ばれる本人確認手続きを行うことが義務づけられています。
本人確認を義務付けている法律は「犯収法」に限りません。その他にも、質屋や古物買取事業者は「古物営業法」を根拠として、通信キャリアは「携帯電話不正利用防止法」を根拠として、マッチングアプリや出会い系サイト運営者は「出会い系サイト規制法」として、というように様々な法律により、多くの事業が様々なシーンで本人確認を行うことが法的に義務付けられています。
なお、犯罪手口の高度化・巧妙化によっては上記に限らず、今後法規制の範囲が広がることが予想されます。たとえば、2023年の特殊詐欺グループによる広域強盗事件では、居場所・発信元が追及されにくい「050アプリ電話」などが連絡手段として利用されていたことから、今後はIP電話事業者などにも新たに本人確認手続きが義務付けられるようになるのではないかと言われています。
現状、法的に本人確認が義務付けられているわけではないものの、顧客の安心・安全への配慮に基づき、自主的に本人確認が行われるケースです。代表例としては、プラットフォーム上でのユーザー間取引が挙げられます。トラブルが起こった際に備えて、本人確認を行っておく必要があることから、より効率的に本人確認が行えるeKYCが利用されています。
厳格な本人確認が必要な例がシッティングサービスです。過去にはマッチング型ベビーシッターサービスで派遣されたシッターによる犯罪行為が起きてしまいました。法整備はもちろんですが、事業者側でも身分証等による個人身元確認作業などを通して、事前に犯罪可能性のある者を除外できるようなリスク対策が求められています。
その他、eKYCを用いた本人確認が自主的に用いられている例としては、以下が挙げられます。
最後に、なぜeKYCの利用が進んでいるのか、その理由について触れておきます。以下6つの理由から、eKYCは今後も加速度的な普及が考えられます。もし、導入を検討している企業があれば参考にしてください。
偽造書類による不正を防ぐため、犯収法が更に改正され、2022年からは従来型の非対面における本人確認書類の範囲が厳格化されました。かつては運転免許証の写しを1枚送ればよかったのが、今後は現住所が記載された本人確認書類をもう1つ送らなければならなくなりました。このようなオフラインでの本人確認のハードルが上がったことで、オンラインへの切替えが更に進むと考えられます。
多くの企業がサービスの利便性やスピードの向上を競い合う中、対面での手続きや郵送が求められる従来型の本人確認は明らかに不釣り合いです。サービスの利用開始に至らず、ユーザーが申込途中で離脱してしまう恐れが高まってしまいます。今後、スマホやWebでダイレクトにやりとりできる、利便性の高いeKYCの仕組みを導入することが当たり前のように求められるようになるでしょう。
従来は、本人確認書類を1通ずつ受け付け、手作業で照合し、処理・保管、転送不要郵便の送付などを行わなければなりませんでした。それがオンラインで完了できれば、郵送に関するコストはもちろん、確認・郵送にかかっていた人的運用コストも大幅に削減することができます。オペレーターによる目視確認は残りますが、画面上で一度に確認できるので、ユーザー一人あたりの作業時間を大幅に短縮できます。
犯収法改正後、メルペイやLINE Payなどのキャッシュレス決済サービスにeKYCが導入され、話題となりました。2020年には携帯電話不正利用防止法が改正され、携帯電話の新規契約やMNPの本人確認にもeKYCが認められるようになりました。今後もレンタル、不動産業務、各種金融サービスへの申し込みなど、社会的ニーズを受けて新しく台頭してきたサービス領域を中心に、適用範囲が拡大していくと考えられます。
メリットがあることは分かっていても、「画像送信のための専用ソフトウェアの用意」「新たな社内運用体制の構築」などがハードルとなり、なかなか切替が進まない場合もあります。近年ではそれらをクリアする専用ツール・サービスも数多く登場しています。撮影ソフトウェアや照合作業など必要な機能・業務のみを切り分けて提供してくれるもの、そもそもの本人確認フローの体制構築から一緒に相談に乗ってくれるようなものなど、様々なサービスが登場したことで、ぐっと利用しやすくなっています。
マイナポイント提供などの施策の甲斐あって急速に普及しているマイナンバーカード。2023年5月の時点で、累計申請件数9.600万件(返納分含まず)を超え、運転免許証の数値を超えたと言われています。政府は本人確認におけるマイナンバーカード原則一本化を検討しており、今後普及促進から利用促進へと軸足が移るに連れて、様々な局面でオンライン本人確認の利用が強まると予想されます。
現在ではeKYCの本人確認を効率よく行うための専用ツール・サービスが数多く存在します。スマホアプリ版かブラウザ版か、AI利用の有無、対応している本人確認書類の種類、BPOのようなサービス提供型かシステム開発型か、などによって種類が分かれます。
以下、主なツール・サービスを特徴ごとに一覧でまとめてみました。eKYCサービスの導入を検討されている方は参考にしてください。より詳細を知りたい方は「eKYCサービスの比較9選!タイプ分けして料金・特徴を一覧で紹介」をご参照ください。
サービス名称 | 特徴 |
---|---|
TRUSTDOCK | 導入実績200社以上。業務設計や確認業務のアウトソーシングにも対応。 |
ProTech ID Cheker | Webブラウザ型。本人確認書類と顔写真を一度に撮影可能。 |
ネクスウェイ本人確認サービス | 導入実績230社以上。オペレーターによる本人確認BPOサービスも提供可能。 |
GMO顔認証eKYC | AI顔認証。利用回数が少なくても導入しやすい従量課金制。 |
Digital KYC | 同社開発の顔認証エンジンによる顔認証の精度の高さが強み。 |
Polarify eKYC | グローバルで金融機関へ導入実績のある生体認証技術を採用。 |
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オンラインで本人確認が完結できるeKYCについて、その具体的なやり方・種類・仕組み・安全性などを説明しました。本文中にも触れましたが、従来型の郵送による本人確認の厳格化・eKYC適用範囲の拡大などを受けて、今後あらゆるシーンで本人確認ニーズが増していくと考えられますが、その一方、もし本人確認を行うとして、その安定運用のために事業者が考えなければならないことはたくさんあります。
「どのやり方で本人確認を行えばいいか」
「どの情報を、どのようにして収集すればいいか」
「認証作業などの本人確認体制はどのようにして構築すればいいか」
「収集した個人情報をどうやって保管・管理すればいいか」
現在、専用eKYCツール・サービスも多数登場してきています。自社で本人確認を行うことに課題を感じている場合には、それらを利用してみるのもいいでしょう。その場合、技術的側面ばかりではなく、導入期間の短さ、導入の容易さ、BPOサービスの提供の有無、課金体系など、様々な側面から比較検討して、自社のニーズに応じたツール・サービスを選定することをおすすめします。
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