最終更新日:2023-04-03
作業現場や工場などでの熱中症対策をお考えの方へ。IoTサービスを使って何ができるのか、どんなサービスがあるのか、選ぶポイントとともにご紹介します。
熱中症対策IoTソリューションとは、IoTを活用して、気温・湿度等あらゆる計測データの分析を通じて熱中症になる危険兆候をいち早く察知し、予防行動を促すサービスです。主に、建設現場、工場など作業環境が苛酷になる可能性がある場面で、従業員の安全を確保するために利用されています。
現状では以下の4種類が挙げられます。
ウェアラブル端末とは、体に身につけることができる(wearable)デバイスのことです。たとえば、センサーを搭載したリストバンドや下着が当てはまります。リアルタイムで心拍数等を計測できるため、事務所から現場従業員の状況を遠隔でチェックしたり、アラート通知を受けて警告や休憩を促したり、熱中症対応策に役立てられます。
その他、脈拍数の急激な変化と位置情報を紐づけて危険個所の特定・予測を行うほか、加速度から転倒・転落を把握するといった利用方法もあります。
従業員が個別にセンサーとスマホを携帯し、センサーで気温・湿度等を計測、スマホを通じて事務所にいながら現場の熱中症の危険指数を把握、警告や休憩を促すことができます。
現在の暑さ指数(=WBGT。気温、湿度、輻射熱から算出)のみならず、民間気象会社から配信される1時間後の暑さ指数の予測値をも取得し表示。警戒値を超えた際はパトランプやブザーで通知し、警告を促します。
室内の温度や湿度が基準に達すると熱中症アラートがスマホに通知され、エアコンをスマホで遠隔操作できます。1~3と異なり、在宅の高齢者やペットの熱中症予防に効果的。
本記事では、特に注目されている「1.ウェアラブル端末での心拍等身体データ計測」について、仕組みやメリットなどを詳しくご紹介します。
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熱中症対策と言っても、「どんな情報」を「どんなデバイス」で計測するか、「どういう手法で分析するか」は、個々のソリューションによって異なります。本項ではウェアラブル端末を用いた熱中症対策IoTソリューションに絞って、タイプ・仕組みを紹介していきます。
サービスによって異なりますが、計測する情報としては、心拍(脈拍)が基本情報になり、そこに他の計測データが加えられるのが一般的です。判断指標としては、気温等による身体への負担の大きさを表す尺度の熱ストレスや、体にどれだけ負荷がかかっているかを表す尺度の作業強度がよく使われます。
ウェアラブル端末に搭載されたセンサーデバイスが、身体の生体情報を計測。取得したデータはスマホ経由でクラウドに送信されて分析されます。熱中症対策の危険度が高いと判断された場合は、管理者や本人にリスク発生をアラート通知することもできます。
分析そのものは心拍と当日の温度・湿度さえわかれば可能ですが、正確性・有効性を担保するのであれば、個人差を考慮して分析できるものが望ましいです。同じ数値でも普段の心拍数との差や、年齢が20代か50代かなどの条件によって、危険度が違ってくるためです。
なお、瞬間的なデータのみでなく、労働科学の専門家による評価結果を機械学習でモデル化し、時系列性までをも考慮した分析を行うといった、AIの活用例もみられます。
熱中症対策IoTソリューションを導入すると実際どのような効果があるかというと、以下の3つのメリットが挙げられます。
当然のことながら、最大のメリットは熱中症を予防できることです。熱中症は従業員の健康を損なうばかりか、それにともなう事故の発生は企業にとっては管理責任を問われうる重大な問題です。熱中症対策IoTソリューションの利用により、危険兆候が確認できれば、該当者に休憩を促すといった対応ができるようになります。
今までも水分・塩分補給や休憩の声掛けなど、熱中症対策はどの現場でも実践されているでしょうが、熱中症は自覚症状が出にくく、出た時には多くが手遅れであること、また自覚症状があっても納期に間に合わない、代わりがいないなどの理由から言い出しにくい、休みにくいといったのが現状です。そこでIoTソリューションを利用することで数値で危険性を可視化し、気づけない、気づいても言い出せない、という問題を解決します。
計測した身体データは、熱中症の予防だけでなく体調面の管理にも有効です。疲労がある、体調面が優れない等も察知できるため、事故を未然に防ぎ従業員の健康を守ることにつながります。
特に安全対策のために酷暑の中でも長袖・長ズボン、ヘルメットの着用が義務付けられている作業現場や、従業員の高齢化が進む企業においては健康管理、安全管理は最優先課題の一つと言えるでしょう。
発生時のリスクを減らすだけでなく、「従業員を大切にしている」というメッセージの発信は従業員にも社外関係者にも届きます。人材定着や人材採用等にもよい影響が見込まれます。
また、言葉でのコミュニケーションに不安要素のある外国人労働者を多く抱える企業の場合は、非言語的に情報をやり取りできるIoTソリューションの活用によって、ほかの日本人従業員同様に目を配ることができます。
実際に熱中症対策IoTソリューションを選ぶ際には下記の3点がポイントとなってきます。
生体情報の分析なので、精度の高さは何よりも重要です。
たとえば、「みまもりがじゅ丸」は、大学や研究所の医療専門家などの知見に基づいた高い検知精度を誇ります。「Work Mate」は、パルス・活動状態といったバイタル情報をAIで分析することで、異常状態を高精度で検知可能。熱中症予兆をはじめ、注意力低下や転倒・転落といった労災事故の予防に役立ちます。
精度の基となる豊富な研究経験や分析実績に十分な裏付けのあるサービスを検討しましょう。
また、熱中症になる条件は個人差やその時の体調面に大きく左右されるため、単に一律の数値を超えるとアラートではなく、個人差を加味した分析であるかどうかは必須です。
個人差の判断基準となるデータは即日では蓄積・分析できません。具体的には、あるサービスでは約一カ月の利用で個人データが蓄積され、適正な基準値が設定されるようになると言われています。つまり、正確なデータを蓄積するためには、本格的な猛暑になるよりも先に、前広に導入を進めることが重要となってきます。
分析時の条件設定や、個人差の調整などを手動で設定するとなると大変です。リスクの検知精度が高まらないばかりか、検知のための作業に追われてしまう可能性があります。前述のような、個人データを一定量蓄積すれば自動で分析して基準値を設定してくれるサービスを選ぶことで導入時、そして運用時の設定、調整にかかる手間暇を省けます。
リストバンド型か、下着型(ウェア型)かで使い勝手は異なります。リストバンド型は複数存在しますが、作業の邪魔になるといって従業員が付けてくれないと意味がありません。業務に支障のない軽量でコンパクトなデザインのものを選ぶべきです。
ウェア型は、まだ製造メーカーも少なく最先端の注目技術です。下着として着込んでしまうため、作業に支障が生じにくいというメリットがありますが、搭載できるウェアを何枚も用意しなければならないため、費用がかさみます。
いずれにせよ、センサーデバイスと共にデータの送信手段となるスマホを携帯するのが基本となります。スマホなしでも動作できるタイプもあるので、高所での作業などスマホを持ち込めない環境での作業が多い場合にはおすすめです。たとえば、「ワーカーコネクト」はわずか45gの腕時計型のバイタルセンサーを使用可能。「Work Mate」は軽量で作業の妨げにならないスマートウオッチ型でサービスを提供。TicWatchに加え、Apple Watch SEでも利用できます。
熱中症対策IoTソリューションの選ぶポイントを踏まえてサービスをご紹介します。
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(出所:みまもりがじゅ丸公式Webサイト)
300社以上の導入実績を持つウェアラブルIoTサービス。建設現場・製造現場・運送現場などで利用されている。
脈拍数から検知するリストバンド型。スマホなしで動作するタイプもあり。医療専門家と分析を重ねた異常検知方法が強み。一か月のデータ蓄積により自動で個人差設定。
また、デスクワークやテレワーク中の心的ストレスをみまもる「オフィス向けプラン」は蓄積した脈拍データを使ってストレス状況を客観的に把握。「通常」「軽いストレス状態」「ストレス状態」と3段階で表現する。
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(出所:ワーカーコネクト公式Webサイト)
腕時計型バイタルセンサーが3分間隔で、作業員の心拍・皮膚温度・位置情報・転倒などの情報を収集。収集した情報はWeb上に一覧表示され、熱中症や転倒などのリスクがある時にはPCの画面表示やメール送信で異常を通知。携帯電話のSMSなどへの自動通知可能(オプション)。管理者は、夜間や現場にいない時でも作業者の異常をリアルタイムに把握できる。
腕時計型バイタルセンサーの重さはわずか45g。作業の邪魔にならず、しかも、動作温度は-10℃~60℃、電池持ち約15時間。生活防水機能も備えているため、幅広い環境下の現場でも安定して使い続けられるのが強み。
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(出所:Work Mate公式Webサイト)
AIを活用したデータ分析をもとに、熱中症や転倒・転落といった労災事故の未然防止をサポートする。アプリを実装したスマートウオッチを装着するだけで、疲労蓄積やパルス・活動状態などのバイタル情報を集積。作業者の個人特性や作業特性を分析し、異常状態をリアルタイムで検知・通知。作業負荷の調整や配置転換、作業者への見守り強化といった行動変容を促進する。
「熱中症予兆検知機能」では、熱中症の発生や重症化の防止に適切なタイミングで休憩通知・復帰通知の受け取りが可能。現場責任者の人材管理コストの削減だけでなく、現場の業務効率アップも期待できる。
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(出所:hamon band公式Webサイト)
暑熱リスク対策向けリストバンド型IoTサービス。脈拍データから暑熱リスクを3色でリストバンド上に表示する方式。暑熱リスクが高まる場合はバイブレーションでも通知する。
クラウドは利用せず、デバイス単体で利用するタイプのため、導入方法も利用方法もシンプル。ただし、管理者ではなく各人でリスクを把握することになる。
(出所:みまもりふくろう公式Webサイト)
リストバンド型で脈拍と位置情報をリアルタイムで計測するウェアラブルIoTサービス。クラウドの管理画面で各人の状態を数値や色で把握できる。基準値を超過すると管理者へメールでアラートを通知する。基準値はユーザーの個体差を考慮して計算されるので、誤検知が少ない仕組み。
(出所:Smartfit for work公式Webサイト)
繊維メーカーが開発した心拍等を計測するストレッチウェア(下着)搭載型。時計型や耳に装着するイヤータイプもある。AIを用いてリアルタイムに暑熱作業リスクや体調変化を把握する。暑熱作業リスクは管理画面に「ほぼ安全」「注意」「危険」の3段階で表示。体調の平常範囲のしきい値を超えた高リスク作業者は、管理画面へのアラート表示やスマホへの通知が行われる。
スマホでの確認画面にも対応しており、スマホ上で各人のリスク状態や体調の変化を確認できる。
(出所:hitoe® 暑熱対策アプリ for Cloud公式Webサイト)
暑熱環境下での作業者の体調管理に優れたIoTサービス。作業者はセンサーを搭載したウェアを装着するだけ。ウェアが微弱な電気信号から心拍データを読み取り、スマホに送信。異常を検知した場合は、指定先のメールアドレス宛にアラート通知。休憩・療養などの適切な指示につなげられる。
ウェアは金属製の繊維を使っていないため、「汗をかいた状態でも正確に測定できる」「肌さわりがいい」のもポイント。
(出所:熱中症対策サポーター公式Webサイト)
気温や湿度を計測するセンサーとスマホを携帯することで、事務所の管理画面で現場の環境を把握。各人のスマホ上では、リスクの度合いをメーター形式で把握できる。管理者から注意を促すスマホへのメール送信機能にも対応。
また、オプションでは定期的に体調を確認するアンケート機能も利用できる。
(出所:ThingBridge VISION公式Webサイト)
マルチセンサーに対応したデータ可視化システム。腕時計型の皮膚温度センサーや、特定の場所に設置する温湿度センサーなど、複数の種類のセンサーで環境情報や体調の変調を、より正確に・詳細に把握可能。たとえば、複数の作業現場の温度変化や作業者の皮膚温度の上昇などを本部で一括で収集・確認し、危険がある場合、各現場の職長や本人にアラート通知を送る、といった使い方もできる。
(出所:おんどロイド公式Webサイト)
計測子機で収集した温度データなどがクラウドに集約され、データが管理画面に表示される。警戒温度を超えるとメールでアラートを通知したり、回転灯を作業させたりするイベント設定機能にも対応。
(出所:Link Gates公式Webサイト)
家庭用の熱中症対策にも対応したIoTサービス。
外出先からでもスマホで室内の温度を確認でき、エアコン操作等に対応。一定の温度になるとスマホにアラートを通知する「熱中症アラート」機能を搭載。どの部屋で熱中症の危険性があるのか把握できる。
熱中症対策というと夏だけのイメージですが、熱中症対策IoTソリューションは夏だけの利用ではありません。従業員の体調管理は年間通して長期的に行われてこそ意味があります。
また急激な心拍の変化から「ヒヤリ・ハット」箇所を見つけて注意を促すことや、加速度から転倒・転落をいち早く発見することなど、すぐにでも取り組むべき価値があります。熱中症対策を一つのきっかけとして、これらのIoTソリューションを調べてみることが、安全・安心な環境作りへの有効な手段です。
なお、熱中症対策のIoTソリューションをお探しの方は、こちらからサービス紹介資料をダウンロードいただけます。
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