薬局の煩雑な在庫管理業務やその周辺業務を効率化するため、在庫管理システムの導入やリプレイスを検討している方へ。条件や選び方のポイントとともに、おすすめの調剤薬局向け在庫管理システムを紹介します。
調剤薬局向け在庫管理システムとは、医薬品の在庫管理を効率的に行うためのシステムです。有効期限のチェックや、棚卸をはじめとする管理業務の効率化を期待できるほか、過剰在庫や欠品の防止にも役立ちます。導入によって得られるメリットは以下のとおりです。
近年、薬価の引き下げやジェネリック医薬品の普及推進による収益減が、調剤薬局の経営を圧迫しています。「対物業務から対人業務へのシフト」による収益向上が必要とされるなか、在庫管理システムを用いた業務効率の改善に注目が集っています。
なお、病院向けの医薬品在庫管理システムは「病院向け医薬品在庫管理システム13選。できることや選び方は?」にて詳細を解説しています。
調剤薬局向け在庫管理システムには、下記のような機能が搭載されています。
在庫管理 | 各医薬品の在庫に関する数量、内容量、薬価、購入価格、有効期限、ロット番号などをデータ化する機能。日次棚卸が簡易になり、期末棚卸の負担が軽くなるほか、調剤ミスの早期発見につながる |
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需要予測 | 来局者の人数や医薬品の処方数を、処方実績やAIに基づいて予測。欠品防止や、人的リソースの管理に便利。また、その日の処方内容をふまえた事前準備ができるため、待ち時間の短縮や業務の効率化にもつながる |
自動発注 | 在庫の数量が一定以下になったときや、需要の急増が予想されるときに、自動で医薬品を発注する機能。適正な発注量が自動算出されるため、業務にかかる手数を削減できる |
棚卸支援 | ハンディスキャナーによるバーコードの読み取りで、在庫データを更新。手入力よりも正確かつ迅速に更新できるので、負担が軽減される |
不動在庫管理 | 不動在庫を削減する機能。不動在庫を自動で洗い出すほか、ほかの薬局への分譲や、調剤薬局向け二次流通市場への売却もスムーズに。煩雑な作業が効率化され、廃棄ロスも防げる |
電子薬歴 | 医薬品の処方履歴や服薬指導の記録など、来局者のデータを管理。処方監査を効率的に進められるため、医療機関や来局者への情報提供がスムーズに。来局者への服薬指導のサービス向上が期待できる |
本部管理 | 調剤薬局を多店舗展開する会社が、各店舗を一元管理するための機能。不動在庫をグループ内で動かしたり、発注量を調整したりすることで、経営の全体最適化を図る |
分析レポート | 入出庫の状況など経営分析に必要なデータを自動でレポートにまとめる機能。書類作成が自動化できるほか、経営改善を効率的に進められるようになる |
調剤薬局向け在庫管理システムは大きく3つのタイプに分けられます。
需要予測や在庫残数に基づいて、適正な発注量を算出し、自動で発注する機能が備わったタイプ。発注量を計算する手間が削減でき、欠品や過剰在庫の回避に役立ちます。
たとえば「Musubi AI在庫管理」は、AIを活用して需要予測と発注量の算出を行い、その日に購入すべき医薬品をリストで表示。処方頻度の少ない医薬品や、極端な処方量が必要な来局者を加味して需要予測を行うため、最適な発注量を割り出します。
また「LINCLE(リンクル)」は、実績データに基づく需要予測に特化。適正在庫の算出から不足している医薬品の発注までを自動で実行してくれます。処方量や来局頻度などのデータを活かして、来局日や処方内容を予測することも可能です。
複数体店舗間における在庫を本部で一元管理したい場合におすすめのタイプ。グループ全体の発注総量を最適化したり、医薬品を店舗間で移動させたりすることで、社内全体の在庫を効率的に運用。調剤薬局を多店舗展開している会社に最適です。
店舗ごとの経営状況をリアルタイムで一覧化できるため、日次・月次の報告の負担が軽減されるだけでなく、スムーズな経営改善につながります。たとえば「PS+マネジメント」は、在庫状況・入出庫データ・処方箋枚数といった店舗ごとの経営実績を、本部で一元的に確認できます。
また「Retriever」のように、売上・売掛管理の自動化に強みを持つシステムも。レセコンやPOSが取得したデータを自動連携できるので、各店舗の報告業務にかかる手数を削減。更に本部側の管理画面では、各店舗の在庫情報・売上情報などが参照でき、不動品の抽出や経営分析に役立ちます。
薬歴管理とレセコン、在庫管理が一体となったタイプ。調剤薬局の運営に必要な機能が一通りそろっているため、薬局内の電子化を一挙に進めたい場合におすすめです。
たとえば「Pharmy」は、電子薬歴やレセコンの役割を兼ねているため、処方データをそのまま在庫状況に反映。正確な在庫状況をリアルタイムで把握できます。
調剤薬局向け在庫管理システムを比較検討する際に留意したい、4つのポイントについて解説します。
需要予測や自動発注といった発注支援機能が充実していると、調剤助手やスタッフも在庫管理に携われるようになるため、薬剤師の業務負荷軽減に役立ちます。また、空いた時間を服薬指導に充てるなど、患者ファーストな薬局運営が可能に。
発注支援機能の中でも、特に注目したいのが自動発注機能。自動発注には、主に手動での設定と需要予測の活用による方式があります。更に、需要予測の方法もシステムごとに異なっており、処方実績を利用した統計的な予測や、AIの実装により精度を高めた予測などがあります。
たとえば「ASKAN」は、需要予測にAIを使用。来局者や地域の特性、医療機関や医師の処方の傾向など、幅広い外部データをAIが学習し、需要予測の精度を高めます。更に、同社の「PICKING GO」と連携すれば、より正確な出庫データが利用できるため、最適な発注量の算出が可能に。
また、「LINCLE」は、手動で発注したい場合のアシスト機能が充実。現在の在庫量と需要予測をふまえて購入すべき医薬品を提案したり、過去6カ月で処方履歴がない医薬品をワンクリックで表示したりと、発注量の検討に必要な情報を素早く提供します。
期限切れによる医薬品廃棄の防止に役立つ機能が充実していると、調剤薬局の利益率やキャッシュフローの改善が期待できます。
たとえば「PS+マネジメント」は、発注時にグループ内他店で不動在庫になっている医薬品の情報が参照可能。グループ全体の廃棄削減に役立ちます。また、「Musubi AI在庫管理」は、発注時にグループ内の不動在庫を自動で検知して、他店舗から取り寄せられます。更に、余剰分はシステムを通してPharmarketに売却できるため、在庫の圧縮に有用です。
一方「ミザル」には、各店舗の不動在庫を処方実績のある店舗に自動で振り分ける、自動按分機能を搭載。廃棄を未然に防ぎ、経営資源の有効活用できます。
医薬品ならではの様々な包装単位に在庫管理機能が対応していると、在庫状況を正確に把握できることに加え、需要の予測精度の向上というメリットが得られます。
たとえば「ODSS」は、「PTP/バラ」や「0.5g/1g 分包」など、規格が異なる包装単位にも対応。医薬品ごとの包装単位をふまえて、発注点の算出や需要予測ができるので、高精度な在庫管理を実現します。
また「Pharmy」は、薬品単位ではなく包装単位で在庫を管理。更に、それぞれの包装に複数のJANコードを登録できるので、ハンディスキャナーによる読み取りで入出庫の管理が完了します。
棚卸作業にかかる時間を削減したい場合は、ハンディスキャナーやバーコードによる管理ができるサービスがおすすめ。
たとえば「ODSS」は、ハンディスキャナーによる棚卸機能を搭載。手書きや目視よりも効率的な棚卸作業を実現します。
また「ミザル」は、医薬品発注・情報端末機「Future ENIF」に連動しており、医薬品のバーコードを読み取るだけで棚卸が可能に。オプション機能を利用すれば、端末で読み取った棚卸の結果から、棚卸金額の自動計算や棚卸表の自動作成ができるようになります。
(出所:Musubi AI在庫管理公式Webサイト)
AIの需要予測により、適切な在庫量を保つ在庫管理システム。需要の予測から発注量の算出までを、処方実績に基づいて自動で実行。発注作業にかける時間を大幅に削減しつつ、適正在庫を維持できる。納品データの自動取り込みはもちろん、未納品の情報も表示されるため、確認の手間が省けて便利だ。
また、グループ店の期限切迫品や、不動在庫まで知らせてくれる検知機能を搭載。店舗間融通による不動在庫の圧縮を促進する。また、グループ内で引き取り手が見つからない不動在庫を、医薬品二次流通サービス「Pharmarket」に売却できる「らくトク売却機能」も便利。
(出所:LINCLE公式Webサイト)
調剤薬局業界の大手企業である同社のノウハウが盛り込まれた、在庫管理クラウドサービス。入庫・出庫・発注・棚卸といった在庫の動きを時系列順で確認できるほか、取り扱いに注意が必要な医薬品用の集中管理リストを作成するなど、現場の需要から生まれた便利機能が充実している。発注時には、処方実績や来局頻度などのデータから需要を予測。適正在庫を算出し、不足品を自動発注する。薬局の状況に合わせて必要な作業をシステムが提案する「業務アシスト」機能も便利だ。
また、手動で発注したい場合には、必要な医薬品の提案に加えて、しばらく処方されていない医薬品を表示させられる。
(出所:メドオーダーフルプラン公式Webサイト)
余剰在庫の削減に本気で取り組むための、調剤薬局向け在庫管理システム。AIが過去のデータに基づいて、最適な発注内容を提案。余剰在庫を抱えるリスクを低減できるほか、検品作業の削減にも役立つ。発注内容はその都度調整でき、薬価改定や棚卸が行われる時期に発注量を抑えるといった操作も可能だ。
更に、複数店舗の管理に役立つ機能が充実。他店舗の在庫閲覧機能を使えば、店舗間融通による在庫の圧縮を図れる。また、引き取り手のいない不動在庫は、医薬品二次流通サービス「メドシェア」にも出品可能。
店舗間の在庫推移や各店舗の実績数値などが確認できる、本部向けの管理画面が用意されており、複数店舗の一元管理が容易に。
(出所:ODSS公式Webサイト)
医薬品の卸売事業会社が提供するクラウド型医薬品在庫管理システム。調剤薬局のニーズを踏まえた設計により、薬局の経営改善につながる在庫の適正化を行う。特に来局患者予測機能に優れており、必要な時に必要な量だけを発注可能。予測時には、来局者名や処方元もまとめて確認できる。また、「PTP/バラ」や「0.5g/1g 分包」など、規格が異なる包装単位に対応しているのも特徴だ。
ハンディスキャナーと連携することで、バーコードの読取りによる棚卸もできる。医薬品の入庫時に受信したロット・有効期限付きデータを取り込めば、在庫状況の更新が完了。在庫管理に必要な作業時間を大幅に削減する。
(出所:ASKAN公式Webサイト)
AIによる高精度な需要予測に特化した、調剤薬局向け在庫管理システム。処方実績に加えて、来局者や地域の特性、医師・医療機関の処方の傾向、気温といった外部データを利用し、AIが需要を予測。余剰や欠品もない最適な在庫数を実現し、キャッシュフローを大幅に改善できる。
更に、同社のピッキング監査スマホアプリ「PICKNG GO」を組み合わせると、医薬品をスマホカメラで撮影するだけで在庫状況がアップデートされるように。より正確な理論在庫が算出されることで、実在庫とのずれを限りなくゼロに近づけられる。また、システム上で店舗間チャットができるため、電話やメールでの確認作業がなくなり、連携がスムーズに。
(出所:ミザル公式Webサイト)
複数店舗の一元管理に強みを持つ薬局本部システム。本部で全店舗の在庫や売上などのデータを把握し、スムーズな在庫の振り分けを行うための機能が豊富にそろう。たとえば、不動在庫を検知すると、グループ内で処方実績がある店舗に自動で按分。廃棄を未然に防ぎ、利益の最大化を実現する。
また、処方データに基づいた自動発注も魅力的。状況に応じて調達頻度を調整してくれるため、発注作業における手作業がほとんど発生しない。棚卸においても、同社が提供する医薬品発注・情報端末機「Future ENIF」との連携によって、バーコード読み取りでの検品作業が可能に。薬局業務を止めることなく棚卸が行える。
(出所:Retriever公式Webサイト)
多店舗展開する薬局向けに開発された在庫管理システム。在庫情報、帳合情報、売上情報といった各店舗の実績データを本部がまとめて管理できる。本部側の操作により、各店舗で一定期間処方の実績がない医薬品を不動在庫として抽出。店舗間の在庫移動をシュミレーションしたうえで必要な店舗に振り分けられるので、在庫圧縮の促進に有用だ。
レセコンとの自動連携機能を活用すると、レセコンの処方情報をもとに出庫・日報情報を作成。加えて、卸から受け取った納品データもそのまま取り込んで、ロットや有効期限をシステム内に反映できる。ピッキングの際には、処方データを用いた正誤チェックにより、誤った医薬品の提供を予防する。
(出所:PharPlus公式Webサイト)
グループ店舗同士の連携向上と、本部による一元管理機能に強みを持つ調剤薬局向け在庫管理システム。他店舗の在庫情報の検索や、「不動品掲示板」をつかった不動品情報の共有ができるため、各店舗が主体的に在庫の圧縮を進められる。また本部機能では、各店舗の発注履歴、入庫・出庫履歴、在庫数量などが一覧で確認可能。自社の形態に合った運用ができる。
一元管理機能をうまく使えば、本部主導のもとで経営の全体最適化も見込める。また、確認在庫一覧やデッドストック一覧など、様々な帳票類を出力できるのも魅力的だ。
(出所:PS+マネジメント公式Webサイト)
本部による統制強化と店舗のロス削減を同時に進められる、調剤薬局向け在庫管理サービス。グループ内の不動在庫を全店舗が閲覧できるほか、不動在庫を各店舗に自動で振り分ける機能を搭載。これらの機能によって、期限切れによる廃棄削減を期待できる。
各店舗のレセコンに入力されたデータは、システム上で自動集計。集計結果をもとに作成された日報を本部システムで確認できるため、書類作成の手間削減や、正確な在庫状況の共有が可能に。また、発注点の利用や発注予約など、状況に応じて適した発注方法を選択できるのも便利。
(出所:Pharmy公式Webサイト)
在庫管理と電子薬歴・レセコンの機能が一体化した、オールインワン型のシステム。来客予測、自動発注、店舗間在庫共有といった基本機能を搭載。入力された処方出庫の情報は、そのまま薬品出庫の情報として更新されるため、在庫管理画面への入力作業が不要に。加えて、レセコンと在庫情報の間に生じる数量のズレを確認する手間も省ける。
在庫の数量管理は、PTPやバラといった包装単位に対応。それぞれの包装に複数のJANコードが登録できるため、ハンディスキャナーでバーコードを読み取るだけで在庫情報の入力が可能だ。
(出所:MAPs for PHARMACY公式Webサイト)
「対物業務から対人業務へのシフト」を念頭に置いて開発された、クラウド型の調剤薬局業務支援システム。電子薬歴・レセコン・在庫をシステム上で一括管理することで、対物業務に必要な人員の削減を実現する。在庫管理システムは調剤薬局のニーズに特化しており、在庫一覧、発注一覧、ABC分析一覧といった形式での表示が可能。処方入力時にも在庫状況が表示されるため、わざわざ在庫管理システムで確認する必要がなくなる。包装の種類別で分けられる在庫一覧や、シンプルで見やすく操作性も高いUIが特徴だ。
更に、WindowsOSであればPC・タブレットのどちらにも対応。在宅支援の現場でも、薬歴の確認から在庫の確認・入力までが可能に。
(出所:P-CUBE n公式Webサイト)
リアルタイムで在庫データを把握できる、電子薬歴レセコン一体型システム。入庫、棚卸、店舗間入出庫、在庫調整などの基本機能で在庫管理業務全般を効率化する。発注・仕入れによる入庫データと処方による出庫データを一元管理することで、処方入力中に医薬品の残数を表示。気づいた時にすぐ発注をかけられるため、発注もれによる欠品が起こりにくい。
また、処方実績に基づいて適正在庫を自動算出するため、発注作業の手数を省ける。グループ展開している店舗では、他店の在庫を検索できるうえに、デッドストックリストからの分譲や引取の依頼もシステム上で完結。在庫の圧縮を進めやすい。
診療報酬改定により、調剤薬局の経営環境は年々厳しさを増しています。収益確保のためには、業務の効率化を進め、対物業務から対人業務へシフトすることが重要です。これらの課題解決に役立つのが調剤薬局向け在庫管理システム。導入することで、業務プロセスの効率化や顧客満足度の向上、更に在庫の圧縮による利益率向上も実現可能です。
調剤薬局向け在庫管理システムは、大きく3つのタイプに分けられます。自局に合ったタイプを選んでください。
コロナ禍を経て、調剤薬局に期待される役割は多様化しました。在宅医療やオンライン服薬指導などの新しいニーズに調剤薬局が応えるためにも、調剤薬局向け在庫管理システムの導入を検討してみてください。
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