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サプライチェーン・マネジメント(SCM)とは?わかりやすく、事例紹介も

サプライチェーン・マネジメント(SCM)とは?わかりやすく、事例紹介も

最終更新日:2024-05-24

サプライチェーン・マネジメント(SCM)について知りたいという方向けに、そもそも何なのか、メリットや課題、傾向・対策などを導入事例をまじえながら、わかりやすく紹介します。

目次

サプライチェーン・マネジメント(SCM)とは?

サプライチェーン・マネジメント(SCM)とは、サプライチェーンを効率的に管理・運用するための仕組みや取組みの総称です。

そもそも「サプライチェーン」とは?

サプライチェーンとは、製品やサービスについて、様々な工程を経て最終的に消費者に届くまでの一連の流れを指す用語です。具体的には、原材料の調達、製品の製造、製造された製品の保管や配送、そして消費者への販売に至るまでの活動が含まれています。

一般的に、サプライチェーンは複数企業の連携で成り立ちます。たとえば自動車メーカーであれば、部品メーカー、鉄鋼メーカー、樹脂メーカー、ガラスメーカー、物流業者、販売会社などが協力し、それぞれの役割をこなすことによってサプライチェーンを構成しています。

サプライチェーン・マネジメント(SCM)をわかりやすく

サプライチェーンでは、調達、製造、在庫管理など各工程に様々な情報が蓄積されています。従来は各所でデータを事後的に収集し、各々で効率化が行われていましたが、リアルタイムでデータを収集・共有して、サプライチェーン全体を効率化させようというのが、サプライチェーン・マネジメントです。

サプライチェーン・マネジメント(SCM)をわかりやすく

  • 調達/いつ・どこから・どの材料・部品を・どれくらい仕入れたか
  • 製造/調達した材料・部品を、いつ・どこで・どれくらい組み合わせたか
  • 在庫管理(保管)/完成した商品を、いつ・どこで・どれくらい保管しているか
  • 流通/商品を、いつ・どこへ・どのようにして・それくらい運んだか
  • 販売/商品が、いつ・どこで・どのようにして売られているか
  • 消費/商品が、いつ・どこで・どのようにして利用されている

あらゆる情報を一元管理することで、正確な需要予測、適切な在庫管理、効果的な生産計画、効率的な輸送計画など、各工程で正しい振る舞いを取ることが可能になります。企業はこれによって、製品の供給過剰や在庫不足、製造の遅延といった問題を未然に防ぎ、市場における競争力を強化できるのです。

本記事では、サプライチェーン・マネジメントの必要性や導入における課題、メリット、効果的な導入事例など網羅的に紹介しています。

なお、企業でサプライチェーン・マネジメントを採用する場合、合わせて専用システムを導入するのが一般的です。ツールについて知りたい方は、「SCMシステム比較12選!汎用型から業種特化型まで、選び方を紹介」をご覧ください。

 

サプライチェーン・マネジメント(SCM)の必要性

従来のサプライチェーンは、業界や対象となる製品によって様々な課題を抱えています。製品の物理的な特性や、市場の要求、製造過程や物流の複雑性などは、対象となる製品によって大きく異なります。そのためサプライチェーン・マネジメントについても、製品別、業界別に異なる戦略を立てる必要があります。

製品ごとの課題

まず、製品ごとにサプライチェーンにはどのような課題があるのかを取り上げます。

スマホ・自動車など

スマホや自動車などの電子機器の場合、高速で進化する技術に迅速に対応しなければなりません。その上、非常に早いペースで新機種が発売されるため、部品供給から組立、出荷までの各段階で緻密なスケジュール管理が要求されます。半導体などの高性能部品は限られた供給源に依存していることが多いため、サプライチェーンのリスクが高まるという問題もあります。

また、自動車では安全性が極めて重要になるため、厳しい品質基準を遵守する体制が必要です。また、近年ではEV車推進によってガソリン車の生産台数の減少が見込まれるため、多くの部品メーカーにおいてサプライチェーン・マネジメントによる生産の最適化が求められています。

食料品、飲料、加工食品など

食料品や飲料、加工食品では、品質の確保や鮮度の維持など、安全性の確保が重要です。

国や自治体、業界団体によって定められた安全規格や品質基準を満たすための温度管理や流通経路の確保、更に季節による原材料の調達可能な量、消費者の需要といった変動への対応が求められます。また、輸入食品では、国際物流の遅延や関税問題、気象変動など、直接的にサプライチェーンに影響を及ぼす要因が多いため、高度なリスク管理が必要になります。

医薬品、化粧品など

医薬品や化粧品の製造や販売には非常に厳しい法規制がかけられており、これを遵守する体制が必要です。規制の基準や傾向は国によって異なることから、個別の対応を強いられることも少なくありません。

また、特定の医薬品は、輸送や保管においても厳密な温度管理が必要であったり、更に一部の生命に関わる製品の場合、供給不足を防ぐための精密な在庫管理と需要予測も求められたりします。一方で、偽造品や粗悪な模造品から消費者を守るための追跡と認証のシステムが求められることもあります。

総じて、サプライチェーン全体にわたって厳密な品質管理と追跡可能性が求められるため、規制当局の承認を得て運用されるサプライチェーンが必要です。

医療機器

医薬品と同様に、医療機器も非常に厳しい法規制の下で管理されています。そのため、品質や安全性に対する厳密な管理体制が求められます。取り扱いの難しい精密機器が多く、製品単価も高いため、保管や輸送においても細心の注意が必要です。

業界別の課題

続いて、業界別ではサプライチェーンにどのような課題があるのかを取り上げます。

物流業

物流業では、配送の効率化とコスト削減、そして信頼性の確保が大きな課題です。交通事情や自然災害、政治情勢といった外部要因の影響を受けやすいことに加えて、最近ではドライバー不足や燃料コストの上昇も深刻な問題となっています。Eコマースの普及による小口配送の増加や、冷蔵・冷凍配送をはじめとする取り扱う荷物の多様化などにも対応する必要があります。

製造業

製造業では、複数の国から原材料や部品を調達することが多いため、調達プロセスや品質管理が複雑になる傾向があります。また、コスト削減のための生産効率の向上や、欠品による機会損失や過剰在庫による保管コストの増加を防ぐための効率的な在庫管理も大きな課題です。

小売業・サービス業

小売業やサービス業では、日々めまぐるしく変化する消費者の行動やニーズに迅速に対応することが課題になります。過剰在庫や欠品を避けるためには、高度な分析と予測が必要です。加えて、迅速な配送や販売チャネルの多様化といった顧客体験の向上も求められています。

 

サプライチェーン・マネジメント(SCM)と混同されることの多い類似用語

サプライチェーン・マネジメントには様々な関連する用語や概念がありますが、それぞれには独自の焦点と適用範囲があります。ここでは、サプライチェーン・マネジメントと混同されることが多い代表的な用語について相違点を説明します。

バリューチェーンとの違い

どちらも企業の活動を管理するものですが、サプライチェーン・マネジメントが商品・製品における生産活動を最適化するのに対して、バリューチェーンは企業が生み出す価値を指標にして、種々の活動が「全体価値にどう貢献しているか」を分析するものです。生産活動にとどまらず、研究開発、設計、マーケティング、販売、サービスなど、様々な活動を含む点で異なります。

ロジスティクスとの違い

ロジスティクスは、サプライチェーンの一部です。中でも製品の材料調達から生産・販売に至るまでの物流のプロセスを管理する仕組みです。具体的には、輸送や配送、在庫管理、倉庫管理などが含まれます。サプライチェーン・マネジメントはサプライチェーン全体の流れと連携を管理するものであり、より広い範囲に適用される点で異なります。

ECM(Engineering Chain Management)との違い

サプライチェーン・マネジメントが物理的な製品やサービスの流れを管理するのに対して、ECMは製品開発プロセスにおけるエンジニアリングデータや情報を一元管理するためのものです。具体的には、設計図面、仕様書、製品開発計画、技術的文書などを管理します。ECMではエンジニアリング活動の全体像を把握することで、製品開発プロセスの効率化や製品品質の向上を図ります。

ERP(Enterprise Resource Planning)との違い

ERPは、企業の財務や人事、製造など企業経営の根幹となる各種リソースを統合的に管理することを指す用語です。サプライチェーン・マネジメントが主に製品やサービスの提供に焦点を当てているのに対して、ERPではサプライチェーンのデータを含む、様々な業務領域の情報を一元化して管理している点で異なります。

 

サプライチェーン・マネジメント(SCM)のメリット

サプライチェーン・マネジメントを導入することは、企業にとって多くの直接的なメリットをもたらします。ここでは、具体的にどのようなメリットがあるかを説明します。

各プロセス全体の効率化と最適化

サプライチェーン・マネジメントでは、原材料の調達から製品の開発、顧客への販売に至るまでのサプライチェーンの各プロセスを大幅に効率化できます。具体的には、原材料の調達プロセスの最適化や、生産効率の向上、適正な在庫管理、物流と配送の最適化などが実現できます。

また、サプライチェーン全体にわたって情報システムを統合することで、リアルタイムでの情報共有が可能になり、部門間のコミュニケーションの向上や意思決定の迅速化にもつながります。

在庫の最適化と機会損失の削減

サプライチェーン・マネジメントでは市場動向や消費者行動の詳細な分析を行うことで、高精度の需要予測が可能になります。その結果、在庫管理が適正化され、欠品による販売機会の損失を最小限に抑えられます。過剰在庫の防止にもつながるため、保管コストの削減やキャッシュフローの改善も期待できます。

トータルリードタイムの短縮

サプライチェーン・マネジメントでは、各段階のプロセスが効率化するだけでなく部門間の連携もスムーズになるため、製品やサービスが原材料の調達から消費者に届くまでのトータルリードタイムを短縮できます。企業が市場に対する対応速度を高めることによって、顧客満足度の向上が期待できます。

業務効率化によるローコストオペレーションの実現

サプライチェーンの各段階における業務を効率化し、無駄を省くことができれば、その分、コストパフォーマンスが向上します。結果として、ローコストオペレーションを実現することにつながりまる。企業は市場での価格競争力を高めることができます。

キャッシュフローの改善

サプライチェーン・マネジメントの実施は、企業のキャッシュフローの改善にも寄与します。たとえば、生産効率を向上することで製造コストが削減するのはもちろん、在庫管理が適正化されれば、不必要な在庫保持コストを削減可能。浮いた分の資金をほかの用途や課題に転用できます。

また様々なリスクを効果的に管理することで生産遅延など予期しないコストや損失の発生を防ぐことも可能です。

 

サプライチェーン・マネジメント(SCM)を導入するにあたっての課題

サプライチェーン・マネジメントを導入するメリットは大きいものの、いざ導入しようとすると課題もあります。ここでは代表的な課題について解説します。

社外関係者との目的・利益のすり合わせ

サプライチェーン・マネジメントに関与するサプライヤーや製造業者、流通業者、販売業者、顧客などの様々な関係者達。製造業者であれば生産効率の向上や生産コストの削減、流通業者なら配送コストや信頼性の向上など、異なる目的と利益を持っています。適切に運用するためには、これらを上手くすり合わせ、一貫した戦略を立てることが必要です。

部門間のサプライチェーン・マネジメント(SCM)活用の調整

サプライチェーン・マネジメントは企業のプロセスや文化にも大きな変更をもたらします。そのため、すり合わせは企業間だけでなく、社内の部門間でも必要です。たとえば、生産部門と物流部門、営業部門では、それぞれの立場が異なるため、導入には関係者の抵抗を生む可能性があります。導入を成功させるには、社内間の調整にも適切に対処することが求められます。

国際的な文化・風習・外部要因に対する理解・対応

サプライチェーン・マネジメントの導入は、国内外の多様な企業との連携を必要としますが、各国企業はそれぞれ異なる文化や習慣を持っています。また、国ごとに法規制や経済状況、インフラの事情なども大きく異なるため、サプライチェーンの効率と効果を最大化するためには、これらの外部要因を理解し、適切に対応することが求められます。

 

サプライチェーン・マネジメント(SCM)導入が進む背景

様々な課題がありながらも、近年、多くの企業でサプライチェーン・マネジメントの導入が急速に進んでいます。ここでは、その社会的な背景について解説します。

高齢化社会と労働力不足

サプライチェーン・マネジメントの導入が進んでいる理由の1つとして、日本を含む先進国における高齢率の増加が挙げられます。内閣府が実施した「令和5年版高齢社会白書」によれば、国内では2023年時点の高齢率(総人口に対する65歳以上の割合)は29%となっており、このまま高齢化が進めば2070年には38.7%に達すると予測されています。

高齢率の上昇は、そのまま労働人口の減少につながります。特に製造業への影響は大きく、深刻な労働力不足による生産性の低下や人件費の高騰、品質の低下などが発生することが懸念されています。そのような状況に対応するためには製造工程の最適化が不可欠であり、サプライチェーン・マネジメント導入の機運はますます高まることが予想されます。

物流業界で深刻化するドライバー不足

高齢化社会は物流業界にも大きな影響を与えており、特にドライバー不足による配送の遅延は深刻な問題になりつつあります。配送遅延は顧客満足度の低下に直結しますが、サプライチェーン・マネジメントを導入することで、配送スケジュールやルート策定の最適化が可能になり、遅延のリスクを減らせます。また、適切な在庫管理が可能になるため、製品の無駄な移動を減らすことにもつながります。

円安要因による原材料、燃料費高騰

原材料や燃料の多くを海外からの輸入に頼っている日本では、昨今の円安による原材料及び燃料費の高騰はサプライチェーン全体の大幅なコスト増につながっています。そのため企業にとっては、サプライチェーン・マネジメントを導入することでキャッシュフローを改善し、競争力強化を高めることが喫緊の課題となっています。

グローバル経済への対応・調整

現在、多くの企業が様々な国と地域から資源を調達し、世界市場に製品を供給しています。そのため企業には、グローバル経済の動向に迅速に対応し、為替変動や災害、紛争といったリスクの影響を最小限に抑えるための仕組みを構築することが求められています。このようなグローバルなサプライチェーンを効率的に管理するために、高度なサプライチェーン・マネジメントの導入が不可欠となっています。

SDGsの観点から求められる脱炭素や労働環境改善

サプライチェーン・マネジメントの導入は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも効果をもたらすと期待されています。具体的には、原材料の調達や在庫管理を最適化することで、資源の無駄な使用や過剰生産や欠品による廃棄物の削減を実現。また、物流を最適化することで、無駄な燃料使用量やCO2排出量を削減できます。

また、サプライチェーン・マネジメントはサプライヤーにおける労働環境の改善にもつながります。たとえば、生産効率の向上によって労働時間が短縮。また、原材料調達や製造工程におけるトレーサビリティが強化されることで、児童労働や強制労働の撲滅や安全衛生基準の遵守といった効果も期待できます。

様々なテクノロジーを駆使した改善への期待

自裁にサプライチェーン・マネジメントを導入・運用する場合、専用のSCMシステムを採用するのが一般的です。近年のSCMシステムは、以下のような最新のテクノロジーが相まって非常に高度な機能を有しています。

SCMシステムについて詳細を知りたい方は、「SCMシステム比較12選!汎用型から業種特化型まで、選び方を紹介」をご覧ください。

5G、6Gなど通信環境の発展

通信技術が発展したことであらゆる拠点からリアルタイムで大量のデータの収集が可能になりました。更にモバイルデバイスやIoTデバイスを組み合わせることで、配送中のトラックの情報や製品一つひとつの状況も把握可能です。後述するクラウドやAIの活用も含めて、SCMシステムにおけるデータ取得の精度と効率を大幅に向上させることにつながっています。

オンプレミスからクラウドへ

グローバルなサプライチェーンでは、世界中の様々な地域に分散した拠点からデータを収集する必要があります。従来のオンプレミスでは社内や域内にとどまっていたデータ収集も、クラウド技術を利用することで地理的な制約を受けずに迅速に収集して共有可能。離れた場所で起こった事象にも速やかに対応できるようになっています。

AI技術向上による高精度な予測分析

AIを利用すれば、5G・6Gとクラウドの環境下で集めた膨大な量のデータも高度に分析可能。各所から集まったデータをもとに「今世界で何が起こっているか」をわかりやすく可視化。需給予測や生産計画・在庫管理の最適化を促進し、より効率化されたサプライチェーンを実現します。

 

サプライチェーン・マネジメント(SCM)の効果と事例

続いて、サプライチェーン・マネジメントの導入によって得られる具体的な効果を、実際の事例も交えて紹介します。

需給予測の精度向上(トヨタ自動車株式会社)

サプライチェーン・マネジメントを導入することで、各領域における大量のデータを効率的に収集・分析することが可能になります。それによって、「いつ、何を、どれくらい調達すればいいのか」、「どのタイミングで、どれくらい生産すればいいのか」といった需要予測の精度が向上し、正確な生産計画を立てられます。

たとえば、トヨタ自動車はそれまで生産部門と販売部門で分かれていた車両需給を、専用のSCMツールを導入して一元管理することに。これにより、車両やユニットの需要を正確に予測して管理できるようになり、需要予測をサプライヤーや販売店と共有することで、サプライヤーはより正確な生産計画の調整が、販売店では在庫管理や販促活動ができるようになりました。(出典

コスト削減・リードタイムの最適化(デル・テクノロジーズ株式会社)

サプライチェーン・マネジメントの効果として、生産工程の効率化によるリードタイムの短縮、更に調達コストや在庫管理コストの最適化による、全体的な運営コストの削減が挙げられます。コスト削減とリードタイムの最適化を成功させた企業として広く知られているのが「Dell」ブランドで著名なデル・テクノロジーズ株式会社です。

同社は顧客から直接注文を受けてPCを組み立てる、BTOモデルを採用していますが、それを成り立たせているのが、高度なサプライチェーン・マネジメントです。サプライヤーとの連携を強化し、受注から出荷までのプロセスを効率化。在庫の保持期間の徹底した短縮を実施することで、リードタイムの最適化や価格の優位性を生み出しています。

サプライチェーンの可視化(日本コカ・コーラ株式会社)

IoTなどの最新の技術をサプライチェーン・マネジメントに導入すれば、製品の製造から配送に至るまでの各工程の状況をリアルタイムに可視化することもできます。それによって在庫不足や過剰在庫、配送遅延などといったリスクを早期に特定できれば、迅速な対処につながり、機会損失や顧客満足度の低下を防げます。

たとえば、日本コカ・コーラ株式会社は、複雑で広範囲に及ぶグローバル・サプライチェーンを最適化するためにSCMシステムを導入。生産工程や在庫状況、配送状況などのリアルタイムでの監視及び最適化に注力した結果、世界中のサプライチェーンの状況を的確に把握することができるように。大幅なコストの削減や製品の入手可能性の向上を実現しました。(出典

サステナブル・サプライチェーンの実現(株式会社セブン&アイ・ホールディングス)

サプライチェーンの継続を直接的に脅かす、資源不足やエネルギー不足、労働力不足などの問題。サプライチェーン・マネジメントを導入することによって、労働力不足であればドライバーの待機時間の短縮、作業負担の軽減、資源不足やエネルギー不足であれば資源の省力化、CO2排出量の削減など、種々のリスク防止・回避が可能です。

たとえば、株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、配送事業者による環境配慮型車両の導入や店舗への配送回数削減の推進、配送車両へのエコタイヤの導入、物流センターにおける省エネ設備の導入などの指標をもとに、サプライチェーン全体におけるCO2排出量を算定・分析。環境負荷低減に力を入れています。(出典

また、ユニリーバ・ジャパン株式会社は物流改善に向けて、取引先と共同で新しい取引制度を導入。効率の良い配送や積み下ろし作業の軽減につながる注文に対して割引枠を設けたり、ゆとりを持った配送を推奨したりすることで、1年間で物流に必要なトラックの台数を約4,000台、CO2排出量を1,063トン削減することに成功しています。(出典

 

今後のサプライチェーン・マネジメント(SCM)の傾向と対策

サプライチェーン・マネジメントの導入を検討する上では、サプライチェーンを取り巻く国内外の法制度や公的機関からの提言についても把握しておく必要があります。

Society 5.0・Connected Industries(日本版インダストリー4.0)

我が国が目指すべき未来社会の姿として内閣府が掲げる「Society 5.0」や経済産業省が提唱する「Connected Industries」は、いずれもIoTやビッグデータ、AIなど最先端技術を活用することで、日本にイノベーションを促そうというものです。これらの構想をもとにサプライチェーンに関しても、業界やデバイスの垣根を越えたデータの統合や共有が促進されていくと考えられます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進

Society 5.0やConnected Industriesと同様に、日本政府が進めるDXの推進も、サプライチェーン・マネジメント導入を強力に推し進めることになるでしょう。産業全体でDXが進めば、サプライチェーンの各段階でデジタル化・自動化も進み、結果として全体的な効率化や運用コストの削減につながると考えられます。

サプライチェーン対策のための国内投資促進事業

現在、経済産業省では、サプライチェーンの途絶を防ぐことに加えて、生産拠点の国内回帰を支援する目的で、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」を出しています。国内に生産拠点を整備する場合に限りますが、必要な費用を補助してもらえるため、該当企業は利用を検討するといいでしょう。

グローバルサプライチェーンと人権

国際的なサプライチェーンを抱える企業がグローバル市場で成功するために覚えておかなければならないのが、サプライチェーンにおける人権の尊重です。

たとえば、グローバルサプライチェーンの一角で倫理観に欠けた働き方があった場合、その余波は海外の関連企業に及びます。「国内の法規制・倫理基準を遵守しているから大丈夫」とはなりません。被害を最小限に抑え、ブランドイメージを失墜させないためにも各国の法制度や国際的な人権基準・倫理基準に沿ったサプライチェーン・マネジメントを行う必要があるでしょう。

 

まとめ

労働力不足や原材料・燃料費の高騰、為替の急激な変動など、様々な要因が入り乱れて複雑化・高度化する現代のサプライチェーン。企業が競争力を維持し、持続的な成長を達成するためには、適切なサプライチェーン・マネジメントの実施が不可欠です。製品の需給予測の向上による業務効率化や、コスト削減、リードタイムの最適化など、様々なメリットにつながります。

近年では、サプライチェーン・マネジメント実施のために専用の「SCMシステム」を導入するのが一般的です。最近ではクラウド技術の活用が急速に進み、従来のオンプレミス型システムでは難しかった、リアルタイムなデータ収集やAIによる高度な分析も可能になっています。

ただし、一口にサプライチェーンと言っても、業界や取り扱う製品によって課題は異なります。サプライチェーン・マネジメントの導入にあたっては、事前にビジネスの要件を明確に定義し、どのような課題を解決したいのかを具体的に特定することが重要です。その上で、それぞれの課題の解決に向けて適切なSCMシステムを選択しましょう。

サプライチェーン・マネジメントの導入は、組織全体に影響を与える重大な決定事項です。初期段階から関連するステークホルダーを巻き込み、現場のニーズを取り入れながら計画的に実施しましょう。また、導入後も継続的に効果を計測し、業務の変化や市場の動向の変化に対応していくことが重要です。

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