「複数の広告媒体の出稿管理やレポート作成に追われ、改善策を練る余裕がない」という広告代理店・広告主の運用担当者へ。広告運用ツールのメリットや選び方、サービスの特徴をわかりやすく紹介します。
広告運用ツールとは、Web広告の入稿管理・レポート作成など、広告配信に関する一連の業務を支援するツールのこと。主な機能として、媒体ごとに異なる入稿設定の一元管理や予算配分の最適化、広告効果をもとにしたレポートの自動生成などが挙げられます。
Web広告では媒体ごとに入稿設定を整える必要があります。配信したら終わりではなく、その後もキーワードやデザイン調整や効果測定など、次の施策に向けて細かな作業が途切れることなく続きます。ただでさえ手間がかかるのに、従来は手作業に頼る割合が多いため作業の属人化や設定漏れ・Excelなどへの入力・転記ミスなども発生しがち。媒体間で成果を見比べたり、即時に予算を調整したりするのも一苦労で、バナー・動画などのクリエイティブ管理が加わると手に負えなくなってしまうこともしばしばです。
こういった課題をまとめて解消し、運用の標準化、自動化、高速化を図る手段として期待されているのが広告運用ツールです。広告運用ツールを利用することで業務改善だけでなく、「どの媒体が効果的か」「どういう表現が最適なのか」などの分析・改善など、より本質的な業務に集中することができるようになります。
広告運用ツールには、出稿準備から運用管理、レポート作成、効果分析、クリエイティブ制作支援にいたるまで、様々な業務を自動化・効率化する機能が搭載されています。ここでは、特に自動化の効果が高い6つの機能に注目し、それぞれがどのような課題を解決し、どのような業務に貢献するのかを紹介します。
出稿先の媒体ごとに異なるフォーマットを自動で判別し、最適なキーワードや広告文を提案。たとえば、商材のフィード（商品データの一覧表）や顧客の属性データを取り込むことで、広告のタイトルや説明文をテンプレート化し、複数パターンの広告文を一括生成することが可能になります。
この機能により、データの効率的な取得に加えて、以下が実現できます。
また、媒体に合わせたキャンペーン構造（例：Google広告のアカウント／キャンペーン／広告グループ階層）の設計支援も可能。初期設計にかかる工数も削減されます。
なお、データフィードについて詳細を知りたい方は「データフィードツール比較7選」をご覧ください。ECサイトやデータベース等から広告出稿に必要な形式でデータを取り込むことができます。
入札額や日次予算を、リアルタイムの指標に応じて自動で調整することができます。
たとえば、以下のような評価指標（KPI）をあらかじめ設定しておくと、ツールがそれをもとに最適な値を算出し、入札や予算配分を支援します。
必要以上の出費を抑えながら、広告効果の最大化を図れるのが特徴です。多くのツールは配分の再設定も少ない操作で行えるため、複数の媒体を管理する担当者でも改善サイクルをスムーズに回すことができます。
GoogleをはじめMetaやX、LINEなど、複数の広告媒体を1つのダッシュボードで一元管理できます。
このダッシュボードでは、
といった作業が可能です。
媒体ごとの管理画面にいちいちログインして確認・操作する必要がなくなるため、情報収集にかかる時間や手間を短縮可能。分析やクリエイティブ制作に集中できる環境が整えられます。また、担当者が不在でも広告状況を把握しやすくなるため、チームでの情報共有や引き継ぎもスムーズになります。
API（異なるシステム間でデータをやり取りする仕組み）を使って各広告媒体の最新データを自動取得し、所定のフォーマットに即時反映できます。
対応できる内容は以下のとおりです。
また、レポートではハイライト表示（変化の大きな数値や傾向を自動で目立たせる機能）によって、
などが一目で把握可能。手入力の作業を減らし、人的ミスの防止とスピーディーな意思決定を支援します。
なお、レポート作成について詳細を知りたい方は「広告レポート自動化ツール比較10選」をご覧ください。
Web広告を見たユーザーが、「どのサイトを訪れたのか」「どんな商品を購入したのか」などの行動を把握することができます。複数の広告媒体を横断してユーザーの動きをまとめて確認できるため、どこに改善の余地があるかを把握しやすくなります。
ツールによっては、あらかじめ「成果あり／なし」の基準となる指標（例：CVRが1％未満、CPAが5,000円以上）を設定しておくと、該当項目を自動で通知してくれるものもあります。これにより、
が実現します。
なお、広告効果の測定に特化したツールを検討している方は「広告効果測定ツールの比較12選」をご覧ください。
広告クリエイティブ（バナー・動画・キャッチコピーなど）の制作工程は、外部のパートナーなど複数の関係者と以下のような煩雑なやりとりが発生します。
制作支援に対応した広告運用ツールを導入すれば、こうした工程を1つの画面上で一元管理できます。
具体的には、
といった機能があり、無駄なやりとりや確認漏れを減らし、成果につながるクリエイティブ制作を支援します。
一口に広告運用ツールといっても、ツールによってできることは異なります。運用の自動化や分析、制作支援など自社の課題や運営体制によって重視すべき機能は様々。ここでは主なタイプとその特性、ツール選定時に着目したいポイントについて解説します。
広告出稿に関する予算管理や効果測定のためのレポート作成など、これまで人の手によって行われてきた各種作業を自動化してくれるタイプです。各種業務を社内で対応しており、作業の煩雑さに手を焼いている場合は積極的に検討しましょう。社外へ委託している場合でも、「より精緻なレポートや分析を行いたい」「内製化を検討している」といった場合にはおすすめです。
たとえば、「Shirofune」なら、広告出稿後の予算管理や自動入札の最適化、改善施策の提案から実行、レポート作成までを一貫して自動化できます。専門知識がなくても扱える設計のため、広告主側で運用を内製化したいケースにも適しています。また、「AutoTag」のように、媒体ごとの各種指標を自動でタグ付け・分類し、改善に活かせるタイプもあります。運用工数の削減を重視する場合、有力な選択肢となるでしょう。
広告配信の結果を可視化し、施策を振り返りたい場面などにおすすめの、レポート作成や効果測定に特化したタイプです。入札や予算の自動調整といった運用支援機能は持たないものの、操作がシンプルで導入しやすいのが特徴です。複数の広告媒体を使っていても、データを1つにまとめて管理できるため、顧客の行動をより的確に把握できます。
たとえば、「アドエビス」では広告と自動連携して、媒体ごとに効果や成果への貢献度をわかりやすく可視化できます。アクセスの流入元である広告だけでなく、購入や問い合わせといった成果に至るまでの行動経路も分析できるため、施策ごとの評価や改善方針の検討にも活用できます。レポートをマーケティング戦略の判断材料へと昇華できる点が大きな特徴といえるでしょう。
バナーや動画などクリエイティブ制作の進行管理に対応したタイプです。ファイル管理や承認ワークフロー、チャットなどの機能が1つの画面で完結。複数のメンバーが同時に作業しても履歴が残るため、確認漏れや重複作業を防げるのが大きなメリット。クリエイティブの制作物が多い場合にはおすすめです。それぞれの広告効果も一元管理できるため、制作→改善のサイクルを繰り返して、PDCAを円滑に回せます。
たとえば、「AdFlow」なら、案件単位で制作物やコメント進捗をまとめ、最新版のサムネイル表示が可能です。また、クラウド上でバージョン管理と承認フローも完結できるほか、媒体APIと連携して配信実績を取り込み、制作物ごとの成果を一覧で比較可能。制作と運用を紐付け、改善点を可視化したい制作部門や代理店に適した選択肢といえます。
広告運用ツールは、先述した3つのタイプに分類できますが、それぞれのタイプの中でもツールによってその機能は様々。ここでは、タイプ別に着目したいポイントと具体的な活用シーンを紹介します。
作業の自動化によって運用そのものを効率化したい場合は、入稿や予算調整、入札最適化といった工程をどこまで自動化できるかが重要な検討ポイントです。自社の業務の「どの工程を自動化すべきか」を見極めることがツール選定のカギにもつながります。
たとえば、「Shirofune」は複数媒体への出稿設定を1つの画面で完結できるため、広告主側でも扱いやすいのが特徴。その一方、「AdSIST」は、ECサイトの商品データを自動で読み込み、InstagramやGoogleなど複数媒体への広告配信まで自動化できます。ネットショップや小売業など、日々の出稿作業を手早く進めたい場合に向いています。
このタイプは、連携できる広告媒体の数と種類が重要です。GoogleやYahoo!などの主要媒体は多くのツールが対応していますが、それ以外の媒体や外部連携の可否には違いがあります。また、連携方法がAPIの自動取得なのかCSVで手動取り込みなのかにより、日々の運用負荷は大きく変わります。更に、業務用のMAやCRM、BIツールなど外部システムと連携できれば、使い方次第で、可視化～分析～結果評価といった高度なデータ活用も可能になります。
たとえば、「Databeat」なら、広告媒体と自動連携し、蓄積したデータをGoogle BigQueryやLooker Studioと接続することで、集計から可視化までをスムーズに行えます。あらかじめ設計されたテンプレートを使えば、媒体横断の効果比較や月次レポートをほぼ自動で生成でき、分析作業の省力化に直結。また、APIによる自動連携により、常に最新データをもとにした分析が可能で、手動更新によるミスやタイムラグを防げます。
大量のバナーや動画などを扱う広告制作現場では、ファイル管理や承認フロー、関係者とのやり取りを効率化できるかが重要なポイントです。特に、社内外の複数メンバーで進行する場合は、制作物・コメント・修正履歴などを一元管理できる仕組みが求められます。
たとえば、「AdFlow」は、案件単位で制作物やチャット、承認状況をまとめて管理でき、最新バージョンのサムネイル表示や横断検索にも対応しています。スプレッドシートやメールでのやり取りにありがちな行き違いを防ぎ、制作から配信までのリードタイムを短縮。作業の属人化を防ぎたい現場にも有効です。
（出所：Shirofune公式Webサイト）
13,000件以上の導入実績を持つ広告運用ツール。Google、Yahoo!、Meta（Facebook・Instagram）、LINEなど主要な広告媒体に対応しており、入札や予算配分の最適化、成果に応じた改善施策の提案など、媒体を横断した自動化を実現。出稿設定からレポート作成などの作業も1つの画面で完結でき、工数を大幅に削減。広告運用におけるプロのノウハウがシステムに組み込まれているため、不慣れな担当者でも短時間で運用を開始でき、早期に成果を期待できる。
（出所：ROBOMA公式Webサイト）
広告予算の管理や広告レポート作成、データ分析など一連の作業を自動化。主要な広告媒体との自動連携により、データの一元管理を実現。予算進捗率や推奨日予算の自動計算、異常値検知によるアラート通知、クリエイティブごとの効果分析など、多彩な機能を搭載。更に、Google Analytics・アドエビス・Adjustなどの計測ツール、Salesforceなど外部ツールと自社DBを連携させ、広告効果の可視化と運用の最適化を支援。直感的なダッシュボードと豊富なレポートテンプレートにより、広告運用の効率化を加速。
（出所：AdSIST公式Webサイト）
登録実績15,000サイト以上を誇るネットショップ向けツール。Google、Yahoo!、Meta（Facebook・Instagram）、LINEなど、主要な広告媒体と連携し、商品データの自動取り込みと広告文の作成、配信を実現。チャットの質問に答えるだけの簡単な操作で、専門知識がなくても短期間で集客開始が可能。月額無料で始められるほか、大規模な広告でも低予算で運用できる。ECコンサルタントの知見を活かしたAIが商品フィードと媒体別アルゴリズムを掛け合わせ、広告文生成・入札調整を自動化。
（出所：Perpetua公式Webサイト）
Amazon広告に特化した自動最適化ツール。スポンサープロダクト広告やブランド広告、Amazon DSPに対応。目標ACoSや日予算を設定するだけで、AIが入札やキーワードを自動最適化できるほか、キャンペーンの作成から実行、運用の改善までを一貫して自動化。広告パフォーマンスの詳細なレポートによって運用効果を可視化し、時間とコストを削減しながら成果向上を支援。
（出所：AD EBiS公式Webサイト）
導入実績11,000件以上を誇り、広告効果測定に強みを持つツール。主要な広告媒体を横断してデータを一元管理し、ユーザーの行動経路を可視化するアトリビューション分析、カスタマージャーニー分析、Cookie規制に対応した1st Party Cookieによる高精度なデータ計測が可能。Salesforce、HubSpot、各種DWHとの連携オプションによりLTV分析も可能。それに加え、最短30分でのデータが反映されるなど、迅速な意思決定を支援。
（出所：Lisket公式Webサイト）
広告レポートの自動作成や予算管理に強みを持つ、導入実績650社以上の広告運用ツール。国内外の主要媒体に対応し、媒体別レポートの自動生成や、日別・媒体別の予算配分と進捗管理に対応。広告運用の現場で磨かれた、実務に即したインターフェースを採用。レポートは編集しやすく汎用性の高いExcel形式で出力され、必要な項目を個別に選択できるため、本当に欲しい情報に的を絞った出力が可能。
（出所：ATOM公式Webサイト）
Google、Yahoo!、Meta、X、LINEなど主要媒体はもちろんTikTok、SmartNewsなどにもAPI連携に対応し、レポートの自動作成や進捗管理、アラート通知など、広告運用の効率化を支援。ExcelやGoogleスプレッドシート、BigQueryなど、多様な出力形式に対応し、BIツールとの連携も可能。広告代理店勤務経験者によるカスタマーサクセスチームが導入から運用、定着まで支援するなど、サポート体制も充実。
（出所：Databeat公式Webサイト）
広告レポートの自動化に特化し、分析業務の省力化と精度向上を同時に実現。40媒体以上と自動連携可能で、Google BigQueryへのデータ蓄積や指標の統一整形を通じて、複数媒体の数値を横断して管理。出力形式はLooker Studio、Excel、スプレッドシートなどに対応し、無料のテンプレート活用で定型レポートを効率的に作成。専門スタッフによるチャットやオンボーディングによる支援も用意されるなど、サポートも充実。
（出所：glu公式Webサイト）
広告レポートの自動作成やデータ統合に強みを持つ、広告運用ツール。豊富に対応する広告媒体や効果測定ツールとの連携し、API接続やCSVインポートによる柔軟なデータ収集に対応。Excel形式でのレポート出力や、「ダイス機能」（複数の評価軸によるクロス集計）で任意の切り口分析が可能で、多様な分析視点を提供。BIツールとの連携や自動アラート機能も備え、広告運用の効率化とデータ活用を支援。導入前から導入後まで、専門チームによる手厚いサポート体制を提供。
（出所：ADGoCoo公式Webサイト）
Web広告効果の一元管理と間接効果の測定に特化したシンプルな広告運用ツール。GoogleやYahoo!、SNSなど多様な媒体はもちろん、メルマガ、ブログなどのSEO流入も一括で効果測定可能で、コンバージョン数やクリック数、CPAなどの指標を一元管理。コンバージョンに至るまでのユーザーの行動経路を分析するアトリビューション分析機能を備えており、間接効果の把握も可能。計測用のURLをWebサイトに埋め込むだけの簡単な設置で即日利用できる。
（出所：AdFlow公式Webサイト）
制作チームの業務設計と進行管理に強みを持つ広告運用ツール。バナーやチラシ、DMなどの制作進行管理を一元化し、承認フロー、チャット、素材・バージョン管理、スケジュール自動生成、プレビュー機能などを搭載することで平均45％の工数削減効果を実現し、制作部門の働き方改革を支援。各種広告媒体とのAPI連携により、クリエイティブごとの配信効果を可視化。広告効果の分析やレポート機能も実装。
（出所：Fennec公式Webサイト）
広告クリエイティブの制作進行と配信実績管理を一元化し、検証や改善プロセスの迅速化を実現する広告運用ツール。制作過程の進捗をWeb上で可視化し、進行管理業務を最大40％削減。配信実績と紐付いたクリエイティブ情報をレポート化し、効果検証と改善提案を効率化。トランスコスモスの広告運用・制作サービス利用企業には無償提供され、導入の手間も不要。
広告運用ツールは、複数の広告媒体にまたがる出稿設定や予算調整、レポート作成といった煩雑な業務を効率化し、運用の標準化と自動化を支援します。業務負担の軽減だけでなく、広告効果の向上はもちろん、効果の検証から改善サイクルの高速化にも寄与します。
ツールは大きく分けて、運用そのものを自動化できるタイプ、レポート作成や効果測定に特化したタイプ、クリエイティブの制作管理に強みを持つタイプの3つに分類されます。
導入することで、手間のかかる作業から解放されるだけでなく、運用の精度や対応スピードの向上といった効果も期待できます。自社の体制や目的、直面している課題に応じて最適なツールを選ぶことが、広告運用の成果を高める第一歩となります。
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