取引先との受発注業務や請求・支払手続きなどを効率化するために、EDIを本格導入したい方へ。商取引関連情報の電子化に役立つEDIシステムの必要性導入やメリット、比較のポイント、選び方とともに、おすすめのシステムをご紹介します。
EDIシステムとは、企業間で交わされる発注書などのビジネス文書を、適切に電子化・交換するためのシステムです。
企業同士が取引をする際には、発注書や納品書、請求書などの帳票類や契約書、その他取引に関係する様々なビジネス文書を含む、たくさんの取引関連情報をやり取りする必要があります。こうした商取引関連情報を電子データの形で、標準的な規約に基づき通信回線を介してやり取りする仕組みがEDI(Electronic Data Interchange、電子データ交換)です。
一般に、EDIでやり取りされる電子データの種類は、以下の2つに大別できます。
EDIを運用するには、下のような多くの要件を統一する必要があります。
業界団体が策定した「標準EDI」がある場合は、それに従うことで取引ルールを共通化できます。しかし、標準化されていても、これだけでは実務には不十分です。
基幹システムのデータ構造は企業により異なります。具体的には「自社のコード体系と標準EDIのコードが違う」といった形式の違いをスムーズに吸収する仕組みが必要です。
たとえ同じ業界標準EDIでも、「毎時自動送信したい」「月末にまとめて送信したい」など運用は企業ごとに大きく異なります。それに対応する業務機能が必要です。また、通信管理・エラー処理など個々の現場に対応するための管理機能も必要です。
上記の課題を解決できると期待されているのが、EDIシステムです。EDIシステムは、EDIに必要なデータ変換・通信・ジョブ管理・ログ管理などをパッケージ化しているため、スクラッチ開発のコストや保守負担を大幅に削減できます。EDIを本格導入する企業にとって、不可欠な仕組みといえるでしょう。
EDIは1970年代から使われてきた技術で、古い「レガシーEDI」ではISDNや電話回線(PSTN)が広く用いられてきました。しかし、設備老朽化や市場縮小を背景に、NTTはPSTNをIP網へ移行しており、ISDNは2024年1月に廃止されました。
このため、ISDN前提のレガシーEDIは利用継続が困難となり、企業には以下への移行が求められています。
2025年現在、移行は急務の課題であり、インターネットEDIへの対応状況はEDIシステム選定における重要な基準となっています。
EDIシステムが備える主な機能として、下記があります。
上記の機能のうち、「電子データを生成してやり取りする」という基本機能に関しては、ほとんどのEDIシステムが対応しています。しかし、生成できるデータのフォーマット種別や利用可能なプロトコルの数などはツールによって違います。ほか、PDF生成機能やFAX送信機能などを搭載したシステムもあるなど、サポート状況やできることは大きく異なります。
EDIシステム選択時には、これらの基本機能や付加機能が自社のニーズや要件を満たしているかどうか確認することが重要です。
EDIシステムの利用形態は、自社の設備内にサーバーなどを設置して運用する「オンプレミス」型と、自社に設備を持たずクラウド上にあるサーバー(サービス)を利用する「クラウド(SaaS)型」の2パターンに分けられます。
両パターンから選べるツールと、どちらか一方にしか対応していないものがあり、注意が必要です。
EDIシステム の導入で自社にEDIを構築することで、以下のようなメリットが得られます。
受発注のやり取りを手作業で行う場合、郵便や電子メール、電話、FAXなどを使い、煩雑かつ複雑な業務が発声します。更に、受け取った内容を受発注システムや基幹システムへ入力する作業などにも人的リソースが必要です。
EDIの導入により、決められたフォーマットでの受発注データのやり取りが可能。受け取った情報は、受発注システムや基幹システムなどに自動で取り込めます。
EDIを導入して受発注などの処理を自動化すれば、人的コストの削減に加えて、受発注処理の短縮による納期の早期化や、出荷スピードの向上などが実現できます。電子化によって受注状況などをすぐに把握できるため、意思決定のスピードも向上。自社のビジネスそのものに大きな変革をもたらすことも期待できます。
郵便やメール、電話、FAXなどを使って取引をしている場合、取引先ごとに個別対応を求められるケースも。個別のやり取りにかかる負担が、ビジネス全体のスピードや効率の低下をもたらします。
EDIによりデータのフォーマットなどを業界標準に合わせることによって、負担の削減と、効率アップが見込めるでしょう。
EDIを使わない従来型の取引スタイルでは、取引先が増えるほど受発注処理が煩雑になり、取引先拡大のボトルネックになりかねません。
EDIを導入することで、数多くの取引先と同時に大量の受発注データをやり取りできるように。ビジネスの規模拡大にもスムーズに対応できるようになります。
EDIシステム導入に向けた選定ポイントとして、以下が挙げられます。
EDIで受発注データなどをやり取りする際には、取引先の都合も考慮して、授受するデータのフォーマットなどを定めておく必要があります。業界や業種によっては、利用するフォーマットやEDIサービスが決まっている場合も。たとえば、卸売業・製造業・小売業などの業界における多くの企業では、インターネットEDI仕様の一つである「流通BMS」を採用しています。
業界特化型のEDIサービスには、お菓子業界の「eお菓子ねっと」や、「日食協標準EDIフォーマット」を使ってデータをやり取りできる酒類・加工食品業界の「FINET」などが該当。振込情報のやり取りに関しては「全銀EDIシステム(ZEDI)」なども使われています。
こうした業界の企業とEDIを使って取引を行う必要がある場合には、各サービスへの接続や、データのやり取りに対応しているツールを選びましょう。
長い歴史を持つEDIでは、電子データのやり取りに使われるプロトコルの種類も多様です。たとえば、レガシーEDI向けのプロトコルとして小売業・流通業を中心に長く利用されてきた「JCA手順」や、全国銀行協会(全銀協)が定めた金融取引向けの「全銀手順」および「全銀TCP/IP手順」、流通分野でよく使われる「EDIINT AS2」「ebXML MS」「JX」などがあります。
取引先とファイル交換を行う場合は「FTP」や「SFTP」、また、Webブラウザ経由で電子データをやり取りする場合は「HTTPS」などのプロトコルが利用されます。
自社がどんな業界・業種の企業との間でEDIを利用する可能性があるのか、将来的な視野を持って、必要なプロトコルに対応したツールを選ぶ必要があります。とはいえ、対応するプロトコルの種類が多いツールを安易に選ぶと、利用料金やシステム構築費用、運用コストがかさむ恐れも。対応可能なプロコトルの種類とコストのバランスを考えて、自社にとってベストなツールを選びましょう。
EDIシステム選びに関しては、「改正電子帳簿保存法」への対応の有無も大きなポイントです。同法の施行により、「電子取引のデータを紙へ出力して保存すること」が認められなくなるため、EDIを利用する企業は同法に準拠した形で取引データを電子データのまま保存する必要があります。
EDIシステムが同法に準拠した電子データの保存に対応していれば、別途保存のための仕組みを用意する手間やコストが省けます。
EDIシステムは、中小企業から大企業まであらゆる規模の企業が利用する可能性があります。また、業界や業種、取引の内容や規模などにより必要となる機能なども大きく異なるため、主要な製品やサービスだけでも非常に多くのバリエーションがあり、自社に最適なツールを選ぶのは容易ではありません。
目安として、「業界業種や特定の業務に限らず幅広く活用できるタイプ」と「特定の業種や業務で活用するタイプ」の2つに大別できます。まずは自社が導入しようとしているEDIがどちらのタイプに近いのかを考えて、検討材料にするとよいでしょう。
様々な業界・業種の企業と取引があり、幅広くEDIを使って取引情報をやり取りしたい場合におすすめの、汎用性が高いタイプです。
たとえば「スマクラ」は、業界業種や特定の業務に限らず幅広く活用できます。JCA手順や全銀手順といったレガシーEDI向けのプロトコルに加え、JX手順やEDIINT AS2、ebXML MSとぃったインターネットEDI向けなど、幅広いプロトコルをサポート。やり取りする電子データのフォーマットも、固定長からCSV、XML、PDFまで、様々なフォーマットに対応しています。
ほか、「JSOL EDIサービス」や「JFT/Server」なども同タイプのツールです。
小売業や卸業といった、特定の分野や業務での取引を中心としたタイプ。
限られたプロトコルが利用できれば十分な特定業種で利用する場合、多数のプロトコルをサポートする重厚長大なEDIシステムは必要ありません。そのため、短期間・ローコストで導入でき、特定の業種・業務との取引に使える“小回りの利く”タイプのツールが有力な選択肢となるでしょう。
一例である「EOS名人.NET」では、JCA手順や全銀手順によるレガシーEDIとJX手順による流通BMSをサポート。量販店、スーパー、ドラッグチェーンなど、あらゆる小売業とのEDIに対応したシステムを構築できます。
ほか、同タイプのツールとして「EdiGate/POST」「クラウドEDI-Platform」が挙げられます。
ここからは、幅広い業界・業種との取引に対応している、汎用性が高いEDIシステムをご紹介します。
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(出所:スマクラ公式Webサイト)
40年以上の歴史を持ち、あらゆる業界に対応したクラウド型のシステム連携基盤サービス。 3万社以上の端末を接続し、入力・通達業務を効率化。インターネットEDI、Web-EDI、流通BMS、FAX配信などの幅広いニーズに応えるほか、金融EDI、海外接続、業界VANなど豊富な接続実績が強み。JCA手順や全銀手順などのレガシーEDI向けのプロトコルから、JX手順や全銀TCP/IP、EDIINT AS2、ebXMLといったインターネットEDI/Web-EDI向けのプロトコルまで、10種類以上の標準プロトコルをサポートしている。「スマクラ データアーカイブ」を追加すれば、改正電子帳簿保存法にも対応可能。
国内データセンターによる冗長構成で、24時間365日の安定稼働と強固なセキュリティ基盤を実現。開発から構築、運用・保守までワンストップで提供しており、専任チームが導入から運用までトータルサポートする点も心強い。
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(出所:JSOL EDIサービス公式Webサイト)
SaaS+BPO型のEDIサービス。VAN時代も含めて40年以上にわたる豊富な導入実績によるノウハウを持ち、ユーザー企業のニーズに合わせた柔軟なカスタマイズができるのが強み。JCA手順や全銀手順などのレガシーEDIから次世代インターネットEDIまで、幅広いプロトコルに対応。データ量に応じて設備の使用料を支払うSaaS方式なので、大幅なコスト削減に役立つ。
100名以上の専任メンバーを有し、接続テストやアプリケーション開発などのプロジェクトを強力にサポート。卸・サブ・デポ、統一商品コードの変換や出荷日・拒否理由の設定など、EDI取引に必要な機能を備えた、医薬業向けのERP用パッケージ「EDIサブ・システム」も提供している。
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(出所:JFT/Server公式Webサイト)
160同時通信、10,000接続先などの稼働実績を持ち、大規模な集配信システムの構築を実現するEDIデータ交換ミドルウェアパッケージ。全銀TCP/IPやSSL/TLS手順をはじめ、JX、FTPといった各種通信プロトコルに対応し、通信履歴の一元管理や世代管理が可能。次世代EDIへの拡張や、独自手順への対応など柔軟なカスタマイズ性も魅力の一つ。ファイル転送型のWeb-EDI機能も搭載している。
クラウド型の「JFT/SaaS」、小規模向けの安価な「JFT/Lite Net」など、導入目的に合わせて選べるシリーズ製品も充実している。
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(出所:EDI-Master Cloud公式Webサイト)
OpenAPI(Web API)の採用によって、基幹システムや運用管理ソフト、EAI/ETLなど多様な製品・サービスとのクラウド連携を実現する次世代EDIサービス。通信・変換・ジョブフロー・運用管理といった機能を備え、全銀TCP/IP(広域IP網)(発信・着信)、JX(発信・着信)、AS2と主要なインターネットEDIプロトコルに対応。クラウドに最適な技術を活用し、高い可用性・耐障害性・スケーラビリティを強みとする。
AWSアドバンストティアサービスパートナーとして、AWSを用いた基盤からアプリケーション、EDI運用業務まで、ワンストップで提供。月々のデータ転送量に応じて料金が変動する従量課金制ではなく、定額制を採用しているため、予算管理がしやすいというメリットも。
国際標準規格のクラウドセキュリティ認証を取得するなど、厳格な情報セキュリティ管理体制もポイント。
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(出所:ACMS B2B公式Webサイト)
レガシーEDIから次世代EDIまで幅広く対応するEDIサーバー構築ツール。JCA手順、全銀手順、全銀TCP/IP手順、JEITA/ECALGA、RosettaNet、ebXML MS 2.0、ebXML MS 3.0、JX手順、EDIINT AS2、Chem eStandards、SFTP、OFTP2など数多くのプロトコルに対応し、これらを使ったEDIを統合的に運用管理できる。
各種データ変換や基幹システムとの連携機能(アダプタ)など、必要なオプションを選べるようになっている。動作環境をWindowsに限定し、小規模環境でも利用しやすい「ACMS B2B Limited Edition」や、よりセキュアで高い可用性を持った最上位モデル「ACMS Apex」なども提供。
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(出所:OpenText B2B Integration Enterprise公式Webサイト)
企業間取引を包括的に簡素化する統合プラットフォーム。EDIのほかにも、XML、PEPPOLなど様々なフォーマットに対応し、複雑なシナリオにも対応できる柔軟性が特徴。これまで100万社の取引企業をつなぎ、年間310億件の取引を処理してきた実績を持つ。
自動プロビジョニングツールを用いたセルフコントロールのほか、30年以上にわたる統合環境管理の経験に基づいたマネージドサービスを提供。B2Bインフラの日常的な管理を代行することで、システム導入や運用負荷を軽減できる。
次に、特定範囲での活用に適したEDIシステムをご紹介します。
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(出所:EOS名人.NET公式Webサイト)
流通BMS(JX手順)、全銀TCP/IP広域IP網に対応した、小売業向けのEDIシステム。基幹システムや物流システムと連携し、流通BMS、Web-EDI、メールEDIなど多様な受注形式のデータを一元管理。訂正や緊急発注入力、納品書や納入明細書、ピッキングリストの発行といった周辺業務もサポートし、EDI業務全体の効率化に貢献する。
最小構成では、PC1台のスタンドアロン運用が可能。新たな取引先とのEDIを簡単に構築できるマッピング機能、内部統制強化に役立つ利用者認証や操作ログの保存機能など、充実の標準機能も魅力。日々の業務フローを変更することなく改正電帳法に対応できる、電帳法対応クラウドオプションも用意している。
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(出所:EdiGate/POST公式Webサイト)
低コストかつ短納期で導入できる、クラウド型のWeb-EDIサービス。標準プロトコルを使った接続機能は搭載していないものの、特定の取引先との間で手軽にWeb-EDIの仕組みを導入し、業務効率化やコスト削減を図れる。インターネット接続環境とブラウザさえあればすぐ利用できる手軽さが強み。
見積書や注文書、納品書といったデータをやり取りして、帳票(PDF形式)として出力できるほか、図面データやExcelデータなど大容量データを自動アップロード/ダウンロードする機能なども搭載。仕入先の送受信確認や利用者の操作履歴が残るため、トラブルを防ぐためのトレーサビリティシステムとしても活用できる。
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(出所:クラウドEDI-Platform公式Webサイト)
標準EDIの流通BMSからWeb-EDI、レガシーシステム、FAX-ASPまで対応した、流通業向けのクラウドEDIサービス。発注から支払情報まで、小売業から送信される大量の情報を一括代行受信・変換して卸売業に提供。業務フローに合わせたデータの集配信や、ブラウザを使ったデータのアップロード・ダウンロードなどのサービスも提供している。
データは24時間365日監視・運用されている国内3拠点で分散処理され、災害時のバックアップ体制も万全。CD-ROMを用いて、アップロード・ダウンロードを自動化する「簡単EDIツール」も提供している。
発注書や納品書、請求書などのビジネス文書を電子化し、適切にやり取りするための「EDIシステム」をご紹介しました。
導入により、「自動処理による手作業の削減」「業務スピードの向上」などのメリットが期待できるEDIシステム。電子データの生成・やり取りのための基本機能を備えるほか、「電子データの変換」「定期送信・自動発信などのジョブ管理・スケジュール管理」「送受信履歴の照会」「セキュリティ」といった機能を持っています。
ただし、生成できるデータのフォーマット種別や利用可能なプロトコルの数、PDF生成やFAX送信といった付加機能面に大きな違いが。電子帳簿保存法への対応も含め、導入前には自社のニーズや要件を確認することが重要です。加えて、古くから使われてきた「レガシーEDI」から「インターネットEDI」「 Web-EDI」への移行も進んでいるため、サポート状況や移行のしやすさなども検討要素の一つといえます。
EDIツールは、主に以下の2タイプに大別できます。
1の汎用タイプでは、コストを加味しつつ、なるべく多くのフォーマットやプロトコルをサポートしているシステムを選びましょう。その上で、想定するEDIの規模(トランザクションの量や接続先数)や、自社の基幹システムとの接続性、業務との親和性などを考慮しつつ、ツールの候補を絞り込んでください。
コストを検討する際は、イニシャルコストだけでなく、運用や保守などにかかるコストもしっかりと見積もっておく必要があります。EDIでやりとりするデータ量が当初の見込みより大幅に増えた結果、サーバーや回線の増強などが必要になり、想定外のコストがかかってしまうといった事態も起こり得ます。従量課金タイプのクラウド型ツールの場合も同様に、想定外の料金が課金されるリスクがあります。
接続先が増えることで、将来的に機能を拡張する必要が生じることもあるので、オプション機能の価格などもしっかりチェックしておくことが重要です。
本記事の内容を参考に、自社に最適なEDIシステムの導入を検討してみてください。
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