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プレスリリースの書き方|社外広報のアウトカムを意識した作成と展開

プレスリリースの書き方|社外広報のアウトカムを意識した作成と展開

最終更新日:2019-03-30

こんにちは。ちそう株式会社の山本です。今回は、プレスリリースを中心に、社外向け情報発信ツールについて、書いていきたいと思います。多くのステークホルダーが目にし、自社の情報に触れ、自社に対するより良い印象や評価(レピュテーション)の醸成、株式や製品・サービスの購入、採用活動への応募など積極的な好意的行動を生み出す土台を作っていくことが、社外広報の大きな目的になります。

特に、社外広報を担当されている方であれば、何度も書くことになるプレスリリースは、社外広報においてキーツールであり、コストがかからないというメリットの反面、書き方が分からない、書くのが苦手、配信・展開方法が分からないなど悩みも感じると思います。そこで、プレスリリースを中心に、より効率的かつ戦略的に社外広報ツールを作成し、展開していく方法を紹介したいと思います。

目次

社外広報ツールを企画する時に意識すること~アウトカム~

本題に入る前に思い返していただければと思うのですが、みなさんはどのような意識で社外広報ツールを、ひいては社外広報戦略を企画されていますか? どのような人に情報を見てほしいのか、そのためにどのメディアや場所に展開するのか、魅力的なコンテンツは、などいろいろなことを意識していると思いますが、私は、社外広報を考えていく上で、ツールや戦略は最終的に得ようとしている「アウトカム(Outcome)」を意識することが重要だと思っています。

近年は、ツールも増えたこともあり、社外広報担当の仕事は、会社によってさまざまです。簡単に挙げられるだけでも、プレスリリースの執筆・配信、会社案内や広報誌などの紙媒体の企画・制作、WebサイトやSNSの管理・更新、動画の編集・配信、コミュニティの企画・運営など多岐にわたっていると思います。そのなかで、アウトカムを意識しないまま仕事を進めてしまうと、ついつい掲載数や配布数、PV(ページビュー)など目に見える数字だけを追ってしまいます。そして、結局、何のための戦略やツールだったのか見えなくなると同時に、「経営に寄与しない」と経営陣を含め周りに思われてしまうこともあり、社内における広報機能のプレゼンスを下げることになりかねません。

では、例えばプレスリリースでは、どのようにアウトカムを意識していけばよいのでしょうか。広報活動の成果として捉えやすく、追いがちな掲載数や広告換算値などはアウトプットであり、アウトカムではありません。根本に置いておくべきことは、「何のために広報活動をしているのか」という視点(参考:広報入門1:広報が目指すこと、できること)です。その上で、意識すべきは、アウトカム、つまり、掲載された記事を見た人が自社にとって良い方向に動いてくれること、例えば、株主になる、商品やサービスのファンになる、企業そのものに興味を持つ、そんな環境作りの支援ができるかという意識が必要になってきます。

一方で、ここで注意が必要なのは、アウトプットは意識しなくてよい、ということではありません。各メディアには、想定している読者層やメディア独自の方針があります。いわゆる「掲載方針・基準」です。

自社の意図のみで作成されたリリースでは、メディアに受け入れられる可能性は低く、アウトプットがでない、その結果、アウトカムも出ないということが起こる可能性が高まります。ですので、メディアというフィルターを通過でき、なおかつ、プレスリリースの情報から作成されたメディアを見た人が、自社の意図した動きを促すメッセージを盛り込んでいく必要があります。

つまり、メディア、そして対象となるステークホルダーの2段階でコミュニケーション設計を行う、その機能をリリースに盛り込んでいくということが必要です。

ここから先もプレスリリースを例に書いていきますが、基本的には、どのようなメディアであっても、その特性を活かしながら同じように設計していくことになります。

1. プレスリリースの作成

ここまで読んでいただいて、「アウトカムを意識したコミュニケーション設計は、プレスリリース上で具体的にどのように行うのか?」と思われた方もいらっしゃると思います。そこで、ステップを踏まえながら、プレスリリースの構成上のポイントをご紹介したいと思います。

まず、リリースそのもののポイントに触れる前に、基本的なことに触れておきたいと思います。

①結起承転で書く(結論から書く)

よく言われていることですが、作文などでよく使う、起承転結の構成は避けるということです。大手リリース配信サービスを使ったことがある方は、イメージしやすいと思いますが、最初に要約を書くフォームがあります。つまり、結論から書くのですが、これは、メディアが記事として掲載しやすい状況をリリースで作るということで、新聞や雑誌、Webメディアを見ると、ニュース記事では、最初に要約があり、その後に背景や詳細に触れることが多いことが分かると思います。この状態をリリースの時点で作っておくと、メディアの方の編集しやすさが生まれ、その編集効率を上げることが掲載確率を上げることにつながります。

ちなみに、なぜメディアは結論から書くのでしょうか。紙媒体からの流れではありますが、読者が流し読みをしやすいようにという点もありますが、紙媒体の場合、記事を書く記者と紙(誌)面を作る整理部やデスクが異なることが影響しています。整理部やデスクが紙(誌)面を作る際、結論から書く構成になっていると、スペースに合わせて、後ろの段落から切っていくことで編集することができます。印刷工程がある紙媒体の場合は特に締め切りに追われています。

このような工夫をしておくことで、迅速な情報発信を可能にしているのです。Webメディアが主流になり、この構成ではないメディアもありますが、まだまだ主要メディアではWebであってもこの構成になっていることが多いと思います。将来的には変わっていくこともあると思いますが、現時点では、記事掲載率の向上のために意識すると良いと思います。

②タイトルを練る(時間を掛けて考える)

メディアの方は、1日に100~200件ほどのリリースを受け取ると聞いています。それだけの数多くのリリースを読むわけですから、すべてに目を通すことはほぼ不可能です。ですので、タイトルや要約で選ぶということになるのですが、まずは目を惹くタイトルになっていないと、メールやファイルを開いてもらう、プリントアウトを手に取ってもらうことが難しくなります。

また、要約から始まる構成になっていないと、すべてを読まなければならなくなり、読み飛ばされてしまう、つまり掲載を検討してもらえないという状況になることも十分予測できます。仮に読んでもらえたとしても、よほど関心の高い内容でないと実際に記事になる確率が下がってくるでしょう。一度作成したタイトルや要約文は、自分の中でも推敲し、加えて、印象に残るか、内容が想像できるか、周りの人に聞いてみるのもいいと思います。

③リリース内容のレベル~中学生でも分かるように

みなさんは、次のような経験をしたことがありませんか? 何となくタイトルに惹かれて、また、企業研究の一環として、他社のリリースを読んでみた時、書いてある内容が難しいと感じる、よくわからないなどです。この傾向は、IT企業やメーカーなどのリリースで特に感じませんか? その理由の一つは、専門的な言葉が並ぶことが多いためです。

10~20年くらい前から、市場のニーズを捉えて商品開発を行う「マーケットイン」というフレーズが、マーケティングの世界で言われるようになってきましたが、プレスリリースは、未だに製品やサービスを主語にした「プロダクトアウト」の視点で作られているケースも少なくはありません。そのため、必然的に、専門用語で自社商品やサービスの強み、技術的に優位な点で訴求しがちです。これでは、専門用語が自然と入らない記者や読者にとって、理解が難しいリリースになります。

また、なぜ役立つのか、何を解決できるのかが分かりにくくなり、記者に「ニュース」としての価値が伝わりにくくなります。業界担当記者であれば、専門用語も難なく読みこなすと思いますが、多くの記者は幅広い業界を担当しています。業界担当記者だけを対象にしているのであれば、個別に連絡すればよいと思いますが、プレスリリースを行うということは、広く知ってほしいということ。だからこそ、プレスリリースの内容として目指すレベルは、初めて読んでも多くの人が内容を把握できる「中学生でも分かる」が目標になります。

さらに、平易な表記を用いることも重要です。常用外のものなど難しい漢字を使わない、固有名詞として使う場合には、ルビをふることを意識してみてください。なお、標準的な表記として、新聞各社の用字用語を参考に送り仮名や漢字にする、しないを判断していくと良いと思います。読みやすくなると同時に、校正の手間が減ることから、記者の方にも受け入れられやすいものになる可能性も高まります。用字用語辞典については、下記amazonのサイトURLを参照ください。

朝日用字用語辞典 / 読売新聞用字用語辞典 / 共同通信記者ハンドブック

④やむを得ない専門用語は、用語の前に一般名称での解説を付ける

オリジナルの用語や商品名などに、一般名称を前に付けるだけで、内容を把握しやすくなります。例えば、弊社のサービス、Think Squareを、「 “触る”博物館 Think Square」と書く。すると、Think Square自体がどのようなものか、かつ、何が特徴かが分かりやすくなると思いませんか?以前、スマートフォンという言葉が普及する前は、高機能携帯電話「スマートフォン」などの表現が使われていました。初めて聞いた言葉でも、なんとなくモノが伝わるよう、表現されていました。

⑤文章を短くする

説明を書いていくと、一文が長くなってしまいがちですが、体言止め、二文に分ける、注釈とするなどの方法で、できるだけ一文を短くするよう心がけると、読みやすくなります。目安は、フォーマットによって異なりますが、字数を問わず、2~3行以内に収めること。一文、二文は長いものでも問題ありませんが、全てが長文で構成されているようでしたら、ぜひ、意識してみてください。

上記を踏まえた上で、私が考えている効果の出やすいリリースの構成と要素は次のものです。

タイトル
内容は「誰が(Who)」「何を(What)」に絞った25文字以内のコピーにする。しっかりと内容は伝えつつ、文字数は少なければ少ない方が良く、入りきらない情報は、サブタイトル(袖見出し)に入れる

要約
基本は、5W1H(いつ、どこで、だれが、なぜ、何を、どのように)のみ。文字量は200文字程度(3~5行)を目安にする

リード
社会・業界環境や顧客の課題などと自社を結びつけ、新商品や新サービスをリリースした必然性「ニュース性」を作る。ここが、メディアと自社のリリースの接点を盛り込む場所、つまり、最初のコミュニケーション設計が必要な場所になります

詳細
実際にどのように、社会課題を解決するのかを記載する。下線や太字を使って、他者にはない、自社独自のポイントを客観視した上でしっかりと強調する。特に、市場における「新規性」に触れられるとより良い

強み
商品やサービスを実現できた、技術力やノウハウなどの自社の強みの詳細を記載。ここも、自社独自のポイントとなるところは客観視した上で、「独自性」「優位性」に触れながらしっかりと強調する。ただし、競合企業に対する競争優位性をリリースにより損なう恐れがあるような詳細は記載せず、一般化したような内容に変えておきます。ここがステークホルダーへのコミュニケーション設計を行う場所になります。

展望
商品やサービス、自社がどのような未来を目指しているのか、ビジョンを示す。ここが唯一の宣伝文句となります。ここも、ステークホルダーへのコミュニケーション設計を行う場所になります。

 

2. メディア、記者への配信

リリースを作成したら、メディアへ配信することになります。その方法についてここから触れていきたいと思います。

①業界担当記者を見つける

まずは、自社が所属する業界の担当記者がいるかどうかを調べてください。担当記者がいるか、いないかについては、ターゲットとするメディアの記事、例えば競合のニュースなどを読み、冒頭や最後にある記者の名前を調べます。その上で、いる場合には、その記者に連絡します。海外のメディアなどでは、メールアドレスが掲載されていることがありますが、日本のメディアではそのようなケースはあまりないので、代表電話もしくは編集部電話に連絡し、つないでもらいます。感覚的には、メールよりも電話でコンタクトした方が、つながりやすいと思います。

また、連絡するだけではなく、必ず、一度、リリースを持って会いにいってください。一度だけの掲載を獲得しても、アウトカムを得ることは難しいと思います。継続的なコンタクトと情報発信、そしてフィードバックをもらうことが、定期的なアウトプットとアウトカムを生み出す土壌となります。

②ターゲットメディアのリリース送付先を見つける

ターゲットメディアの担当記者が分からない場合は、媒体のリリース送付アドレスを見つけて配信する方法があります。通常、お問合せや媒体資料などに記載されています。これらを一つずつ集めて、リリースの度に配信すると、何度か返信があったり、問い合わせが来たりします。

その時のコンタクトいただいた記者は、少なくとも現時点では、興味を持っているもしくは業界を担当しているということになります。その記者の連絡先を集め、自社の“記者リスト”を作れば、次からはその方にも配信すると、掲載確率を高めることができます。配信サービスを利用する場合でも、 時間は掛かりますが、自社の記者リストは必ず作成するべきです。しっかり作れば、自社の資産になりますので、根気強く作ってください。

③記者クラブの活用

業界、業種を問わず、さまざまな分野、メディアの記者が詰めているのが、記者クラブです。もちろん、業界に特化した記者クラブもありますが、自社の商品・サービスに業界記者クラブがないようでしたら、まずは、都庁記者クラブ、兜クラブに投げ込みをしてみましょう

都庁記者クラブや東京証券取引所内にある記者クラブには、読売新聞などの一般紙や日本経済新聞、雑誌やラジオ、テレビのポストがあります。ここにリリースを投げ込んでいきます。詳細な投げ込み方法は記者クラブによって異なるため、別途ご紹介したいと思います。

④配信(ワイヤー)サービスを活用する

配信サービスを活用することで、簡単に、比較的低価格でメディアへの配信、展開を行うことができます(参考:プレスリリース配信サービス)。本数が多い場合には、年間契約もよいと思います。

予算がないもしくは0という場合には、例えば、Value Pressは、無料で20媒体への配信ができますので、おすすめです。また、PR Timesはスタートアップ支援として、フォロワーが3名以上いると、会社設立から2年間、月1回の配信が無料になりますので(2019年3月現在)、設立後、間もない企業は、このようなサポートを活用するのも良いと思います。

ここまで、プレスリリースについて、触れてきましたがいかがでしたでしょうか。最後に、そのほかのメディアについても触れておきたいと思います。

会社案内や社内報、Webキュレーションメディアなど自社運営しているメディア(オウンドメディア)は、2段階のコミュニケーション設計のうち、一見、最初のステップが不要になると思われる方もいらっしゃると思いますが、そうではありません。自社運営であってもメディアはメディア。編集方針や基準を決めておく必要があります。統一された表現や表記方法は、見ている人に良い意味で“慣れ”を生み、情報の吸収を高めたり、早めたりする効果が期待できるからです。また、ご自身の経験を踏まえてみるとわかりやすいと思いますが、一方的な宣伝文句や教育志向の強い文章が並ぶメディアは、社内外問わず、あまり受け入れられないと思います。

上記を踏まえ、自社運営のメディアにおいてもリリース作成と同じように、メディアに受け入れられやすいように意識する代わりに、見る人に受け入れられやすい状態を作り、その上で、自社にとって望ましい言動をしてもらえるような働きかけをしていくコミュニケーション設計が必要になってきます。

おわりに

今回は、社外広報ツールの作成と展開について紹介しました。充実したリリース文章を作ることはもちろん重要ですが、その内容を受け入れてもらったり、リリースについて客観的にフィードバックをもらったりすることを鑑みると、社外広報ツールの有効活用には、まず、記者にコンタクトすることが重要であり、一番の早道だと思います。一朝一夕にはできませんが、今、やらなければ、将来も出来ません。記者の方と継続的なコンタクトをとり、戦略やツール展開のベースとなる“広報資産”を作っていただきたいと思います。この資産は、今回、自社の情報発信という観点で紹介してきましたが、リスク時にも有効であることを、頭の片隅に置いていただければと思います。

 

執筆者:山本 智(ちそう株式会社 代表取締役/PRSJ認定PRプランナー)
東証一部部品メーカー、マザーズ上場マーケティング会社での広報経験を経て、2017年11月にちそう株式会社を設立。10年以上の広報経験と大学、大学院で専攻していた科学を組み合わせた事業、Think Squares Project、事業活動で得た知見と広報経験による、広報・PR支援を事業として行っている。

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