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Web2.0を超えて-次世代Web時代に向けた技術イノベーション 〔1〕

ASPIC 執行役員 鈴木章太郎
マイクロソフト株式会社
デベロッパー&プラットフォーム統括本部
戦略企画本部 Webプラットフォーム推進部
エバンジェリスト
1. Web2.0概念の登場
1.1 ITの現在・過去・未来
ここ20年のITの歴史を振り返ってみると、1990年代の最初には、まずPCが登場し、大型汎用機の維持管理コストの削減等の要請によるダウンサイジングの機運とともに、企業へのPC導入が始まることになる。その後、95年には、PCの爆発的な普及と同時に、Webの利用が始まる。この頃のWeb利用は、ダイヤルアップで利用者もプロバイダも少ない状況にあったが、その後約10年で、現在のようなブロードバンド普及率が先進国中最も高いレベルになり、ITインフラの整備が飛躍的に進化した。


そして、インターネットの爆発的な普及と、システム間の柔軟な連携の必要性が高まったことから、XML Webサービスが、言語やOS等のプラットフォームにとらわれないベンダー中立の技術として注目されることになる。これは、2000年頃から各ベンダーにより提唱され、その後OASIS、W3C、WS-I等の標準化機関及び検証機関による標準化が進んだ。


その結果、WS-I Basic Profileに相当する内容、すなわち、SOAP、XML、HTTP、UDDI等に関しては、既にある程度の規模の企業や政府機関において実装・運用されることになった。この流れは、現在もさらに継続し、WS-I Basic Security Profileをはじめ多くの拡張機能の標準化が達成されつつある状況である。
ITの現在-過去-未来
1.2 ITを取り巻く状況の変化
このような流れの要因として第1番目にあげられるのは、ITインフラの導入の拡大である。ブロードバンドが発展し、実に数千万世帯に普及してきたこと、そして、一人1台に近いPCの普及、そして、携帯、PDA、ゲーム機等その他のインターネットに接続可能なモバイルデバイスの驚異的な浸透速度が、技術の導入の拡大に主要な役割を果たしたといえよう。次に、人々の間で、"本当にきちんと使える"シームレスなITの体験への需要と願望がそれを補完したことも重要である。これは、自分が使っている諸デバイス、そして自分の所属する組織、役割をまたがって使いたいという欲求である。また、RSS(Really Simple Syndication)の普及にみられるように、オンラインでのデータのデリバリと更新の通知の定着も、重要な変化への要因として挙げられよう。そして、Googleの登場に見られるように、広告に支えられたビジネスモデルの採算性の証明がなされてきたことも、これをビジネスのチャンスと捉える、様々な企業群から注目されてきたということがあげられる。さらに、情報を受信・発信するデバイス群それ自体の収束が進んだことも、それに拍車をかけることになる。すなわち、ブロードバンド化の進展と、技術革新、そしてモバイル端末の普及により、PCで扱うようなリッチなコンテンツを、携帯やゲーム機等でも、場所やシーンに合わせて駆使することにより、いつでもどこでも同じ内容の情報の受信・発信が可能となったのである。
1.3 Web2.0とは?
これは、Web2.0といわれる現象として注目されるようになってきたものである。現在、Web2.0という概念は、Tim O'Reillyが、その論文の中で示している

(http://www.oreillynet.com/pub/a/oreilly/tim/news/2005/09/30/what-is-web-20.html )を元に、様々なメディアや様々な人々により論じられているものである。その内容について、ここで簡単に述べることにする。これはTim O'Reilly が言うところの最近の Web 市場で流行している技術やサービスの方向性を示したもので、次のような特徴を持っている。
プラットフォームとしてのWeb
Webそれ自体がプラットフォームとして機能するという意味である。従来、利用者が検索エンジンやポータルサイトを中心として使用していたWebそれ自体が、複数のサービスが連動したプラットフォームのように振舞うという現象を意味する。Webサービスやオープンソースの技術を基にしつつ、検索エンジンやポータルはAJAX(Asyncronous Javascript and XML)をベースとしたリッチなUIや、オンラインで文書共有可能なワードプロセッサや表計算ソフト、WiKi、SNS、Blog、等がその構成要素となり、RSSにより、その更新が通知され、さらに更新がされていくことになる。
集合知を利用する
プラットフォームとしてのWebそれ自体を構成しているのは、無数の個人や企業のサイトであり、その中心となるのは、SNSやBlog、そしてRSSによる配信である。SNSやBlogが、XHTMLという新しいWeb標準によりXMLフォーマットに統一されたために、一つのBlogから他のBlogへのトラックバックにより、半永続的なリンクが張られることになり、Webの世界のXML化が進んだこと、それらをRSSのような標準の配信手段を使うことにより購読できることにより、Web上のトラフィックは急激に増加した。


これにより、多くの人が購読しているBlogやサイト等、そしてそこからリンクされる他の情報等の順位や集積度等が、誰の目にも明らかになってきた。誰もが多くの人が何を考え、どのようなコンテンツに注目しているのかを知りうることになり、それに基づいて様々な判断を下すようになった。これが集合知といわれる現象である。
データは次世代の「インテル インサイド」
このような状況で、データを持っていること、それ自体が価値を生み出すようになってきたという現象がある。データの配信手段やそれを統合する手段が用意されており、それらは、Blogを中心として、RSS、XHTML、Webサービス(SOAP、REST)といった標準技術に支えられているため、今度は参照される元のデータを持っている企業や個人がプレゼンスを増すようになる。例えば、地図データ、航空写真のデータ、海洋のデータ、気象データ、建築データはもとより、商品データ、カタログデータ、レストランデータ、蔵書データ、購買時の評価データ等々、様々なデータが標準手段により統合されることになる。その結果、それまではこのようなデータを秘匿することにより、競争力を保ってきたはずの企業も、当該データを公開することにより、埋もれていた商品やサービスの潜在的なニーズを発見することができることになる。従って、データを持っている企業や個人が、極めて注目を集めることになり、サービスの中心的要素を提供することができるようになった。
ソフトウェア リリース サイクルの終焉
Webの中でサービスとしてソフトウェアを提供するという業態の中で、商用ソフトウェアの世界では当たり前だったリリースサイクル(例えばある会計パッケージのバージョン1.0が出荷後、1年後に2.0が出荷されるというサイクル)は終焉するという現象または主張である。ソフトウェアは日次ビルドと即時リリースに近いものとなり、ソフトウェアのUpdateはサーバー側のWebサービスだけで、Webのユーザー側にとっては不要となる。ただ、例えば既存の検索エンジン等、ユーザーが商用以外では特に意識せずにブラックボックス的に使用しているものに関しては、このような状況に以前からあり、ソフトウェアのリリースは全てサービスを供給する側の準備の有無に依存することになる。
軽量なプログラミング モデル
従来、Webアプリケーションの開発には、javaやC#等、高級言語といわれるものを使用していたところ、今まで言語として重視されていなかったPerlやPhython等動的言語やスクリプト言語主体のプログラム開発が主流となってきたという現象である。前述の通り、Web2.0的サービス提供方法では、既に存在するサービスの組み合わせが主流となり、また、リリースや修正も頻繁であるため、プログラミング言語はより軽量かつ動的な言語に置き換わってきている。
単一デバイスを超えたレベルのソフトウェア
同じコンテンツやサービスを利用する際に、PCや携帯、ゲーム機等、様々なクライアントによりほぼ同じサービスを提供できるというソフトウェアの提供方法が出てきていることを示す現象である。多くはブラウザを主体とし、同じ様な操作性を実現しているところ、最近のサービスは、よりリッチな適材適所のユーザーエクスペリエンスを指向して、各々のデバイスによりユーザーインターフェースを柔軟に変更していこうとしている。
リッチなユーザー エクスペリエンス
ユーザーエクスペリエンスとは、製品やサービスの使用・消費・所有などを通じて、人間が認知する有意義な体験のことをいう。製品やサービスを利用する過程で、ユーザが真にやりたいことを「楽しく」「面白く」「心地よく」行える点を"提供価値"として考えるコンセプトである。これをWebの世界に当てはめれば、サービス供給者が、テキストや静止画だけでなく、動画、音声、アニメーション、を適切に統合して、Webを通じてユーザーに提供しようという試みであり、そのようなサービスが多数出現したという現象を示している。このように、Tim O'ReillyがいうところのWeb2.0の個々の特徴は、技術そのものではなく、既存の技術の組み合わせにより、実現されている実態にすぎない。その意味で、Web2.0とは、現在のWebに見られる現象全体を示しているのである。
2. We2.0を超えて - 次世代Web時代に向けた技術イノベーション
2.1 Digital WorkstyleとDigital Lifestyle
Web2.0といわれるような現象は、突き詰めれば、技術革新とユーザーのライフスタイル、ワークスタイルの変化と密接に連動している。Web 2.0とされるような現象の登場は、まったく新しいWeb時代が到来することを示唆している。これから注目すべきなのは、先述したように「ユーザー主導の流れ」すなわち「ユーザーエクスペリエンスの共有(ひとりひとりの体験や実感を、誰もが共有し共感できること)」という点である。


人はライフスタイルとワークスタイルに明確な線を引いて生活しているわけではない。それぞれのスタイルを相互に行き来しながら、日々の生活を営んでいる。


例えば、図のユーザーコンテキストー1の問いの答えとしては、両方?どちらでもない?…いろいろな回答が可能である。しかし、それ自体は本質的な問題ではなく、これは典型的なデバイスの収束の一例といえよう。
ユーザーテキスト-1 今見ているのはテレビかコンピューターか?
また、ユーザーコンテキストー2について、これもさほど重要な問いではない。もし家で仕事ができず、逆にオフィスで休憩中に家の宿題ができないのであれば、その通りだが、結局それは通常 (個人又は仕事の)データへの"アクセスポイント"の有無の問題に過ぎないといえる。


更に、左のユーザーコンテキストー3についても、PCの置き場所の制限がなくなった=すなわち場所の収束により、それが何処にあろうと、何に使おうと、・・・データにアクセスし、アプリケーションがそこにあれば問題とはならない。


結局、ユーザーがそれらの活動の中心にいて、適材適所のデバイスと、適切なソフトウェア、臨機応変に使えるサービスをいつでもどこでも利用していくことができれば、ユーザー、データ、デバイス、アプリケーションの間をシームレスに繋ぐことが可能となってくる。これを"新しいライブ時代"と呼んでも良いかもしれない。
ユーザーテキスト-2 今いるのは家庭かオフィスか?
ユーザーテキスト-3 今は友達とお茶か社内の打ち合せか?
2.2 ソフトウェア+サービス
ここで必要となるのが、「ソフトウェア+サービス」というコンセプトである。これは、多様なソフトウェア、デバイス、サービスを、生活(Digital Lifestyle)や仕事(Digital Workstyle)の中でシームレスに使えるようにするという考え方である。これからはソフトウェアとサービスを、二者択一ではなく双方の長所を取り融合させて使うべきもの捉えるべきではないだろうか。


これからの次世代Webを作るために、ソフトウェアベンダーが提供すべきなのは,シームレスなユーザーエクスペリエンスであり、様々なデバイスやアプリケーション、サービスが融合する世界である。そのためには、ソフトウェア+サービスというアプローチが必要なのである。


Webブラウザを使うアプリケーションと,デスクトップ・アプリケーション(スマート・クライアント)も、二者択一の対立する概念ではない。例えば、マイクロソフトのWindows Vistaに搭載されている.NET Framework 3.0の一部で、リッチ・クライアント開発・実行環境であるWindows Presentation Foundationを使って開発したアプリケーションは、WebブラウザにホストすればWebアプリケーションとして稼働し、デスクトップにホストすれば、デスクトップ・アプリケーションになり、いずれの形態でも利用できる。他にも、「PCとその他のデバイス」「WebとPeer to Peer(P2P)」「所有と共有」も二者択一ではなく、両方のモデルを「AND」で提供すべきである。パソコン以外のデバイスにもOSを提供するし、サーバー・アプリケーションだけでなくP2Pアプリケーションも提供する。ソフトウェアのライセンス販売だけではなく、ホスティングでのサービス提供も行う。


このようなシームレスなユーザーエクスペリエンスのためのシステム構築において、中心的なEnablerとして機能するのが、OASIS等により標準化されたWebサービス(WS-*標準)である。RSS、XHTML、等、W3CのWeb標準となっている技術と、REST及びSOAP(WS-*標準)を組み合わせることにより、真に統合されたシステムが構築でき、シームレスなユーザーエクスペリエンスが提供できるのである。


次回以降では、ソフトウェアプラットフォームと、サービスプラットフォームについて、個別に見て行こう。
"Live"時代の到来

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