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医療・健康分野の情報化とセキュアネットワーク基盤 そしてASPの可能性
ASPIC常務理事 御魚谷 武
保健・医療・福祉情報セキュアネットワーク基盤普及促進コンソーシアム
事務局長
富士通株式会社 政策推進本部
政策企画部 ヘルスケア新事業推進室長
最初に、医療・健康分野の情報化という話題とともにその普及を支える新たなセキュアネットワーク基盤について、政府の方針および任意団体「保健・医療・福祉情報セキュアネットワーク基盤普及促進コンソーシアム(HEASNET)」の取組みについてご紹介します。
(HEASNET:HEAlthcare information Secure NETwork consortium)
なぜ、セキュアネットワーク基盤の話をするかと言うと、医療情報という個人情報保護に非常に機微な分野でのセキュリティ要件をクリアするネットワークサービスが提供されたならば、公共分野・金融分野・民間分野への適用も可能となり、今後のASPサービス普及の一助となるのではと考えたからです。
また、医療健康分野は、診療所や健診機関など比較的小規模な法人が多く(約9万拠点)、今後は共同利用・ASPなどの手法が医療・健康情報化普及の鍵を握ると想定されております。
まず、医療・健康分野の情報化に関する政府方針をご紹介します。
本年1月に、今後 5ケ年のIT国家戦略である「新IT改革戦略」が閣議決定され、ITによる医療の構造改革がIT国家戦略の一丁目一番地に位置づけられました。その中で、以下の5つの目標が掲げられ、期限付きで国を挙げての取り組みが始まりました。
< 目標 >
1.
遅くとも2011年度当初までに、レセプトの完全オンライン化により医療保険事務のコストを大幅に削減するとともに、レセプトデータベース化とその疫学的活用により予防医療等を推進し、国民医療費を適正化する。
2.
2010年までに個人の健康情報を「生涯を通じて」活用できる基盤を作り、国民自らの健康状態を把握し、健康の増進を努めることを支援する。
3.
遠隔医療を推進し、高度な医療を含め地域における医療水準の格差を解消するとともに、地上デジタルテレビ放送等を活用し、救急時の効果的な患者指導・相談への対応を実現する。
4.
導入目的を明確化した上で、電子カルテ等の医療情報システムの普及を推進し、医療の質の向上、医療安全の確保、医療機関間の連携等を飛躍的に促進する。
5.
医療・健康・介護・福祉分野全般にわたり有機的かつ効果的に情報化を推進する。
本年6月には、戦略の具体的なアクションプランとなる「重点計画2006」が策定されております。
さらに、同6月に医療制度改革関連法案が成立し、厚生労働省を中心に制度環境整備が加速度的に進められております。
< 主な省令改正、法律制定 >
1.
療養の給付、老人医療及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令の施行について(2006年4月10日施行)
→全国約22万拠点の病院、診療所、薬局、歯科に対するレセプトのオンライン請求の義務付け(2006年〜2011年の5ケ年計画)
2.
高齢者の医療の確保に関する法律(2008年4月1日施行)
→医療保険者に対し、生活習慣病に関する特定健康診査および特定保健指導を40歳以上の加入者(被保険者および被扶養者)に対して義務付け
※健診情報の収集・活用が始まります。
医療分野のセキュアネットワーク基盤については、厚生労働省 医政局が「医療情報ネットワーク基盤検討会」を再開(2006.11.8)し、医療機関等で用いるのに適したネットワークに関するセキュリティ要件定義について2007年3月までに検討を終え、医療機関向けにガイドラインとして通知する予定です。
一方「保健・医療・福祉情報セキュアネットワーク基盤普及促進コンソーシアム」(会長:大山 永昭 東工大教授)は、2005年2月に発足し、産官学医の会員で医療分野の情報化を促進するために、医療分野のセキュアネットワーク基盤(図1)のルールづくりとその実現に向けた活動を進めております。
(図1)医療分野のセキュアネットワーク基盤 概念図
このコンソーシアムで進めている「セキュアネットワーク基盤」とは、既存のインターネット環境にPKIチップを内蔵したルータを適用し、管理センターとの連携により、以下の2つの機能を実現する新たなセキュアネットワークサービスです。
1.要求に応じて相手と接続・切断するオンデマンドVPN機能
2.接続する機器を認証する2階層PKI機能
このセキュアネットワークサービスが実現されると、既存インターネット環境に適用でき、かつ現在提供されているインターネットVPNより強固なセキュリティ機能を提供し、さらに従来できなかった医療機関とネットワーク事業者との責任分解点の明確化が可能となり、結果として医療機関側のセキュリティ運用管理が容易になります。
本コンソーシアムでは、現在厚生労働省で検討が進められている「医療機関等で用いるのに適したネットワークに関するセキュリティ要件定義」を睨みながら、経済的で安全かつ医療機関側のセキュリティ運用負荷を軽減する新たなネットワークサービス実現に向けての活動を急ピッチで進めております。
このように既存インターネット環境を利用でき、かつ責任分回点が明確化されるネットワークサービスが提供されれば、ASPサービスの普及に弾みがつくのでは!!と勝手ながらに考えております。
最後に医療・健康分野のASPの可能性についてですが、医療・健康分野の情報は(1)診療情報(カルテ情報)(2)レセプト情報(3)健診情報に大別されます。
(1)の診療情報に関しては、現在 民間による外部保存が制度上認められていないため、病院などに診療情報(カルテ情報)を保存して診療所などとの共同利用する形態が地域ごとに実現されつつあります。
ASPサービスについては、診療情報の民間外部保存について制度が改正されれば、患者の個人情報に充分配慮した形でのASPサービス提供が可能となり、医療分野の情報化が飛躍的に促進されるでしょう。
(2)レセプト情報と(3)健診情報については、制度上は民間センターでの保存は規制(委託形式を含む)されていないため、今後本分野でASPサービスを展開する事業者が増えていくものと考えられます。
とりとめの無いお話をしましたが、皆様の活動の一助となれば幸いです。
(ご参考)
IT新改革戦略
保健・医療・福祉情報セキュアネットワーク基盤普及促進コンソーシアム(略称:HEASNET)